どこに行くのか、ヨーロッパ!(2)

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 金融危機によりアメリカは大混乱の状態。この金融危機は世界中に影響を及ぼし、ヨーロッパも大混乱に陥っている。
 そして、その金融危機も、各国の対策により解決の糸口が見えてくるようになってきた。しかし、ヨーロッパではさらに混乱が起きている。

 ヨーロッパはどうなるのだろうか。

「ヨーロッパで新たな金融危機」
(Newsweek 2010.1.13)

 金融危機により世界は大混乱に陥った。その金融危機を脱しようと世界中は必死になり、ようやく、落ち着き始めたかに見えた。しかし、油断は禁物である。
 「最も危険な地域はヨーロッパ」で、「スペイン、アイルランド、とイギリスでは財政赤字が膨れ上がっており、うちアイルランドとイギリスの10年の赤字額はGDP(国内総生産)比13%を上回る見通しだ」という。「EU(欧州連合)全体の負債残高も14年までにGDP比100%を上回ると予想されている」。

 その「EU加盟国の大部分は単一通貨ユーロを導入しているため、紙幣を刷って赤字を穴埋めしたり、通貨を切り下げて輸出競争力を高め、景気低迷から脱け出すといった方法を取ることができない」。
 「最悪の場合、経済状態の悪い国では金利が急騰し、赤字返済が滞り、債務不履行に陥る可能性がある」。「ヨーロッパの先進国では1948年以来起きていない事態だ」。

 「08年の金融危機、09年の景気後退に続き、10年には新たな世界経済の混乱が起こる可能性が高い」。「その混乱とは国家財政危機だ」。

「EUが危機的状況に突入」
谷口 永治

 今、EU(欧州連合)が危機的状況に入っている。
 「地中海発の信用不安は各国のマーケットを動揺させ、景気回復の兆しが見えた世界経済の足元をぐらつかせつつある」。「ユーロの変調を受けてダウ平均株価は3ヵ月ぶりに1万ドルを割り込み、アジアの株式市場にも影響が表れた」。「日本では慎重ムードやユーロ安に伴う円高から、日経平均株価が一時1万円を割り込んだ」。
 「EUがIMF(国際通貨基金)が大掛かりな支援に乗り出すことは避けられないだろう」。

 「きっかけは、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ政府が政府系持ち株会社ドバイ・ワールドの債務返済の繰り延べを求めた09年11月のドバイ・ショック」。「ソブリンリスク(政府や政府系機関に対する融資の信用リスク)への警戒感が投資家の間で一挙に高まり、巨額の『国の借金』を抱える国々の多くが株価の急落や市場調達金利の上昇に見舞われた」。
 「信用危機が同じく財政問題を抱えるスペインやポルトガルに波及すれば、もしくはその観測が広がるだけでも、世界の金融市場が大混乱に陥るのは確実だからだ」。
 「欧州にとっては、99年に欧州単一通貨ユーロが導入されて以降の短い歴史のなかで最大の危機だ」。「皮肉なことに、ユーロ圏の景気がようやく上向き始めたことがあだとなって表面化した」。
 「問題は、ユーロ参加国のなかでも景気回復の程度に差があることだ」。「引き締めか緩和かという経済政策のニーズも食い違い、ほとんど二極化してしまっている」。

 「中でも不安視されたのが、頭文字からPIIGS(豚)と呼ばれ」、「長年財政危機に悩まされ、欧州の『辺境』とも言われる」、ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペインの5ヵ国。「とりわけ財政赤字のGDP比が12.7%と飛び抜けて大きいギリシャだ」。
 「昨年12月以降、スタンダード&プアーズ(S&P)などの格付け機関はギリシャ国債の格下げを実施し、ユーロ圏では唯一『A』を下回った」。「このままではECBの資金供給に対して、ユーロ圏の金融機関が差し出す担保条件に当てはまらなくなる」。

 「ギリシャは今年4~6月に償還期限を迎える国債を大量に発行している」。
 「09年12月に深刻な財政危機が表面化して以降、ギリシャではアテネ総合株価指数が大幅に下落」。「国債金利やクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の上乗せ金利も大きく上昇した」。
 さらに深刻なのは、「ギリシャに対する他国の不信は根深い」ことだ。「今回の危機が表面化する一因となったのは昨年10月、GDP比6%程度とされていた09年の財政赤字が実は12.7%だったと新政権が『告白』したこと」。
 「ギリシャは01年にユーロ参加を承認されたが、その際に提出したものに誤りがあったとして04年に財政データを修正」。「加盟承認時を含む数年間にわたり、単年度の財政赤字がユーロ加盟基準の3%を超えていたことが明らかになった」。
 しかし、懸念は根深く、「実際は12.7%を超えていたかもしれないという」。

 「ギリシャは81年に社会主義政権が誕生して以来、90~93年を除いて左派が政権を担当する時代が続いた」。「04年の選挙では保守派が勝利したが、09年には再び左派勢力が政権に返り咲いた」。
 「社会主義的な経済構造が根付いた結果、就労人口の4割近くを占めるともいわれるほど公務員の数が多く、社会保障制度も手厚い」。「90年代以前から続いた放漫財政はユーロ導入後も一向に改善されず、GDP比3%を下回ったのは06年の1度しかなかった」。
 「闇経済の規模はGDPの30%以上に達するといわれ、小売店などでも売り上げを稼ぐために付加価値税分を値引きし、税金を納めない例が少なくない」。
 「タクシー業界がストを行うなど、課税逃れはギリシャ社会に浸透している」という。

 厳しいEUの状況から、「ユーロを離脱して、自国通貨に戻る国が出てくる可能性」があるという。
 「ユーロ圏経済は今年回復する見込みだが、それが新たな緊張を招きかねない」。「極端な場合には、いっそ単一通貨を離脱しようと考える国が出てくる可能性がある」。
 懸念事項として、「ECB(欧州中央銀行)が金融引き締めに転ずるという観測だ」。「ECBはユーロ圏の大国の景気回復に伴って、金融危機後に導入した緊急の資金供給措置を徐々に解除していくと示唆した」。「今も景気後退に苦しむ『辺境』諸国は、見捨てられたと感じた」。
 「オーストリアやドイツなど西欧諸国の失業率は10%未満だが、スペインの失業率は19.5%。住宅バブル崩壊の後遺症も深刻だ」。「アイルランドは、住宅バブル崩壊に加えて銀行破綻の傷も大きい」。「ポルトガルやイタリアは経済構造問題と財政赤字に悩まされている」。
 「ECBの緊急措置を最も多く利用したのもこれらの国々だ」。「ECBが銀行に低利かつ無制限の資金供給をしてくれたからこそ、銀行に国債を買ってもらえた」。
 「債務不履行の危険が最も高いとみられているのはギリシャ」である。「外国から多額の融資を受けており、市場に見放されたらおしまいだ」。「財政赤字を穴埋めするには、どうしても国債を買ってもらわなければならない」という状況だ。
 「ギリシャは産業競争力も乏しい上、財政赤字だけが突出している」。

 「この状況の困難さを思うと、ユーロ離脱という誘惑も簡単には無視できなくなる」。「通貨主権をECBに委ねてしまったおかげで、PIIGS諸国はECBが単一通貨ユーロのために行う決定に従わなければならない」。「単独では金融の量的緩和政策で景気を刺激することもできないし、為替レートを切り下げて輸出を後押しすることもできない」。

 しかし、簡単にはユーロから離脱はできないだろう。「ユーロ諸国は互いに密接につながっており、離脱のコストはとてつもなく大きい」からだ。
 「金融危機以降ギリシャの銀行はこぞってECBから資金を借りてきた」。「09年半ばまでには、ギリシャの金融システムが保有する資産の10%近くが、ECB融資で獲得したものになっていた」。
 「もしこの流動性が消滅すれば、ギリシャの銀行システムには大きな穴が開く」。そして「政府の資金調達にも支障を来し、国債の格付けもさらに引き下げられかねない」。
 それに「実務的で技術的な問題もある」。「もしギリシャがユーロから旧通貨ドラクマに戻れば、市場はドラクマを売ってユーロに換えようとするだろう」。「為替レートの切り下げはユーロ離脱の狙いの1つとはいえ、価値が暴落してしまっては元の子もない」。
 「ユーロとドラクマの鋼管を完璧にこなすのは至難の業だ」。「鋼管の噂が事前に漏れただけで、投資家はあっという間にギリシャに保有する資産を手放しユーロ資産に換えてしまうだろう」。
 「ユーロ圏勝ち組の国々もまた、影響を受けずにはいられないだろう」。「ギリシャのGDP(国内総生産)はユーロ圏全体の3%にすぎないとよく言われるが、ユーロ圏の銀行は想像以上に多額の債権をギリシャに保有している」。「一部の推定によれば、ギリシャに最も貸し込んでいるのはフランス、スイス、ドイツ」。「ギリシャ政府や企業、銀行に対してフランスは755億ドル、ドイツは432億ドル相当の債権を保有するという」。

 「09年12月1日に発効したEUの新たな基本条約『リスボン条約』は、EUからの脱退には言及しているのに、ユーロからの離脱については言及していない」。「EU加盟国だがユーロには参加していないイギリスのような国と、ユーロ参加国との扱いの違いもはっきりしない」。
 「ユーロを離脱する可能性が少ないなら、EUが救済に乗り出す可能性は強くなる」。「リスボン条約は、非常の事態で破綻の危機に陥った国に必要な救済措置を施す法的権限を加盟国に与えている」。
 「単一通貨は順調なときでも扱いにくいものだが、危機は加盟国間の構造的な違いを暴き出し、実際以上に大きく見せる傾向がある」。「格付け機関は再びEUの競争力格差を問題視し、ポルトガルを標的にしている」という。

 「ある意味でギリシャ危機は、世界的な金融危機の最重要課題が不況からの脱出ではなく、財政の持続性に移ったことを示している」。「経済成長の鈍化と、膨れ上がった債務に直面する世界経済の最前線にいるのがギリシャだという見方だ」。
 「だとすれば、ギリシャ問題は金融システムがその新しい局面にどう対処するかの試金石になる」。「たとえ今回の危機を乗り切ることができても、加盟国間の格差がもたらすリスクを最小化する仕組みをEUが示せなければ、11年1~3月に訪れるギリシャの次の大規模な国債償還期限を前に信用不安が再燃しかねない」。

<参考資料>
・「ギリシャが揺らすユーロの神殿」
藤田 岳人(本誌記者/Newsweek 2010.2.24)
・「単一通貨離脱の魔のシナリオ」
トレーシー・アロウェイ(英フィナンシャル・タイムズ紙記者/Newsweek 2010.2.24)

アメリカよ、どこに行く 24
「アイルランドの危機」
ポール・クルーグマン(COURRiER Japon 2009.6)

 「世界経済を予測する上で、最悪のケース」とは、「米国がアイルランド化すること」だという。

 「米国の保守系シンクタンク、ヘリテージ財団は昨年、アイルランドは香港とシンガポールに次いで経済の自由化が進行している国だと発表」。「アイルランド経済の中でも、とりわけ自由化が進んだのが金融部門」だという。
 しかし、バブルははじけ、不況へと。「建設業界の破綻はアイルランド経済を急激に悪化させ、それと同時に不動産価格も急落」。「人々は購入した不動産の資産価値以上の借金を抱えることになった」。
 その結果、「米国同様、債務不履行が急増。銀行は多大な損失を計上。この銀行の経営不振が、アイルランドの政策を行き詰まらせた要因」だという。

 「不動産投資に大きく依存するようになっていた国の歳入は、不動産バブルの崩壊と同時に激減する」。「問題を深刻化させたのは、アイルランド政府が民間銀行の失敗の責任も取らなくてはならなくなったこと」である。「アイルランドは昨年9月、自国の銀行への信頼を強化しようと、銀行債務に政府保証をつけている。こうして納税者を、GDPの倍を上回る損失を被りかねない危機にさらすことになった」という。
 「財政赤字と銀行の負債が、アイルランドの長期的な支払能力への信用を揺るがし、その結果、同国の国債のリスクプレミアムを上昇させ、格付け機関による格下げの可能性を囁かれるようになった」という。
 アイルランド政府は4月はじめ、「銀行の不良債権の多くを買い取り(その結果、さらに納税者をリスクにさらし)、融資者を安心させるために増税を行い、歳出を削減するという一連の計画が発表」され、この政策を取らざるをえなくなった。
 このようなことから、「アイルランドが米国のように、いや、米国以上に米国らしく振る舞ってきた」ために、「現在の苦境に追い込まれた」という。

 「景気低迷に直面したアイルランド」は、保守的な政策で対応。「信用収縮を解消するために、増税と財政支出の削減」を余儀なくされており、「こうした政策は景気をさらに悪化させるだけ」だという。
 「アイルランド政府は、同国のGDPが今年、ピーク時より10%以上下落し、その結果、『景気後退』から『不況』に突入すると予測」。
 問題は「このように政策の選択肢が限られてしまうことが、アイルランド以外でも起きること」である。

「25歳以下の失業率がもっとも高い先進国は?」
グローバリスト(USA/COURRiER Japon 2010.2)

 金融危機は大きな影響を与えている。
 震源国アメリカでは、「リーマン・ショックが起きた08年9月、米国の若者の失業率は13.4%だったが、その後は急激に悪化し18.1%にまで達した」。
 しかも「人種によっても失業率は異なる」。「米国労働省によると、09年10月における、25歳以下のアフリカ系米国人の失業率は、27.1%」。一方、「25歳以下の白人の失業率は13.1%だ」そうだ。

 ヨーロッパでは、「09年、フランスの25歳以下の若者の失業率は24.5%」で、「ヨーロッパ諸国のなかでは比較的高い」。
 「ドイツは2009年、GDPが最も縮小した国の一つ(5.3%減と予測されている)」で、「この国の若者の失業率は、2009年9月の時点で10.4%と、先進国のなかでは低いほう」である。
 スペインの若者の失業率は、「08年は約26%だったが、09年は42.9%にまで達して」おり、「これは先進国のなかでは一番高い」。

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