故郷に帰れない理由

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 イラク、アフガニスタンなど安定しない情勢が続く。これにより多くの「難民」も発生する。世界の難民数は1140万人達したという。

・国連のリポートによれば、昨年、新たに100万人以上の難民が発生し、世界の難民数は合計1140万人に達した。ここ数年、世界で紛争や内戦が減り、難民数は減少傾向にあった。だが今年はすでに、国連が緊急救援活動を行なわなければならない危機が197件も発生(昨年1年間の総数を上回っている)。
・国連の調査によると、イラクからの難民は06年には150万人だったが、昨年は220万人に増えた。
(Newsweek 2008.11.5 『紛争 世界で難民が増え続ける理由』より)

 主に難民数が多い国は、アフガニスタンやイラク、コロンビア。やはり、アフガニスタンやイランはこの中に入ってくる。
 難民数減というちょっと良い兆候が、すぐに悪い方向へと転換してしまう。まだまだ泥沼にはまっている状況にある。
 しかし、この難民数の数字も確かだろうか。この数字以外にも多くの難民がいるのだろう。それは他のデータでもいえる。

 難民が増え、国を脱出する。そして、さらに、国内は不安定化する。この悪循環はいつまで続くのだろうか。
 国内が安定しない原因にはいくつもの原因があげられる。無法地帯となり、武装勢力が支配を拡大すること。それにより、水や電気などといった設備が破壊され、生活環境が悪化する。いろいろな要素が絡み、環境レベルが下がっていく。
 さらには、こんな原因も出てくる。

 専門家の国外への脱出である。
 電力供給や雇用、教育、医療の充実と、それを可能にする専門家がいないと、真の安定は実現できない。なぜ、そういった専門家が脱出していくのだろうか。

・多くのエンジニアや企業家、教師、医師といった人々は、一般の人々より、外国で居住許可や働き口を得やすい。だから武装集団が幅を利かす祖国へ帰りたいと思わない。
・専門職に就いていないイラク人も、帰郷には消極的だ。03年のイラク戦争以来、国外へ脱出したイラク人はおよそ150万人。最新のデータによれば、今年9月までに帰郷した人の数は、そのうちわずか6万人前後だ。180万人ほどいる国内避難民の場合も、約15万人しか故郷へ帰っていない。
・不在が目立つのが医療関係者。
・イラク戦争の後、医師は身代金目的の誘拐や暗殺の標的になった。これまでに殺害された医師は120人以上。05年、イスラム教シーア派の過激な指導者ムカタダ・アル・サドルを支持する一派が保健省の権力を握ると、事態はさらに悪化した。
(Newsweek 2008.11.5 『イラクの医師よ祖国へ帰れ』)より

 身代金目的の誘拐や暗殺の標的になることは問題を大きくしている。
 さらに、問題は深刻である。

・昨年10月に就任したサレハ・ハスナウィ保健相によれば、戦争前に最大3万人以上いた医師はほぼ半減。避難先から帰ってきたのは、歯科医や薬剤師を含めても800人ほどだけ。
・国内トップの神経外科医や、爆破テロをはじめとする集団災害時の救急医療の第一人者など、多くの優れた人材が流出した。戦争の後遺症に苦しむ国に必要な専門かも、ごっそりいなくなった。義足などの人口装具に詳しい医師やセラピストは大幅に不足。さらに問題なのは、数百人いた精神科医が約80人に減ったことだ。
(Newsweek 2008.11.5 『イラクの医師よ祖国へ帰れ』)より

 だからといって、何も対策を行なっていないわけではなく、評価される活動を行なってもいる。

・ハスナウィ保健相は有能な精神科医でもある。以前は中部のカルバラで病院を経営していた。保健相への就任後、まず取りかかったのが職員17万人をかかえる省内の汚職一掃だ。
・スンニ・シーア両派の医療関係者やアメリカ人顧問の間では、ハスナウィへの評価は高い。病院は以前よりも安全になり、外国からの支援も増えた。
・オイルマネーで増えた予算を武器に、医師の給与を2~3倍に増額。地方勤務に応じた医師には無料で土地を提供している。ハスナウィ自身が昔の仲間に連絡を取って帰国を促す一方で、保健相はより安全になったイラクを見てもらおうと、在外医師の「帰郷ツアー」も開催する。
・バグダッドには先ごろ、帰郷した医師向けの職住一体型地区「ホワイトゾーン」が誕生した。
Newsweek 2008.11.5 『イラクの医師よ祖国へ帰れ』より

 しかし、問題は残っているのが現状である。

・とはいえ、帰ってきた医師の大半はなじみの地域に戻ることを選ぶ。
・シル・ファルハンは1年目にオマーンから帰国した。国営病院に勤務する一方、最低限の医療機器と発電機を備えた医院を開業。以前は身の安全を考えて顔みなじみしか診なかったが、今は見ず知らずの患者も受けいれている。
・医療の現状は、勤務先の病院には尊敬できる先輩がほとんどいないし、指導役であるはずの医師たちは何度か誤診をしたことがある。
・年下の医師や研修医にとっては、ファルハンの助言が頼りだ。「独学するしかない状態だ。みんな、医学書やインターネットを見て勉強している」
Newsweek 2008.11.5 『イラクの医師よ祖国へ帰れ』より

 このような状態であるが、何とか安定さを取り戻し、問題を解決しようとしている。

 難民問題は、専門家の脱出といった国内の安定の基盤の一つをとってもリンクしており、帰れない理由の一つでもある。

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