環境問題はたえず進んでいる(5)

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 環境問題をこれまで追ってきたわけだが、今度は環境対策に注目したい。
 突飛な発想といえばいいのか、こういう環境対策があるのだ。

 いろいろな環境対策があり、環境を良くするためのヒントになりそうだ。

「トンデモ科学が地球を救う?」
フレッド・グタール(サイエンス担当/Newsweek 2009.7.15)

 「京都議定書の期限が12年に切れるのを受けて、今年12月にはデンマークのコペンハーゲンで気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)が開催され、13年以降の枠組み交渉が行われ」た。

 「できればCOP15で大気中のCO2濃度を制限し、気温の上昇を2度以内に抑えたいとこだ」。「気温上昇が2度を超えると環境に深刻な被害が出ると、多くの気候学者は懸念している」。「干ばつや洪水が悪化し、沿岸部は海面上昇で危険にさらされ、農業が打撃を受け、生物多様性も失われる」。
 2度の気温上昇がキーポイントになる。
 「97年に採択された京都議定書は、08年~12年に排出量を90年比で5.2%削減することを義務付けている」。「だが01年時点の署名国40ヵ国のうち、議長国だった日本を含む21ヵ国は逆に排出量が増えた」。
 「イギリス、ドイツ、フランスは排出量を削減したが、議定書の削減目標を達成できそうな国は1つもない」。しかも、「京都議定書には中国とアメリカという温室効果ガスの2大排出国が参加していない」ことがネックである。
 「国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は07年の第4次評価報告書で、地球の気温は今世紀末までに2~5度上昇する可能性があると予測」している。
 しかも「今世紀末までに気温が5度上昇すれば、人類の文明はほぼ確実に大打撃を受ける」という。
 「具体的にはどの程度のCO2削減が必要かは不明だが、50年までに現在のレベルから80%減らすというのが最も妥当な線」だという。「先進国にとっても、極めて厳しい目標だ」。「貧困から抜け出そうとしている中国やインドにとっては、不可能に近い」。
 果たして50年までに80%削減は可能なのか。

 温暖化防止の方法として「大気中の二酸化炭素(CO2)を回収し、地下に貯留するというもの」がある。「現在の実験的なクリーンエネルギー発電所で採用されている炭素回収・貯留(CCS)と呼ばれる技術だ」。「クリーンな石炭火力発電所は今後の排出ガスを減らすだけで、根本的な解決にはならない」。

 「CO2の寿命は恐ろしく長い」という。「排出されたCO2は1000年間も大気中にとどまり、今後どれだけ排出量を削減しても、地球を暖め続ける」というのだ。

 「気候変動を正確に予測できない科学が、どうやって地球の気候を安全に変えられるのか」。人工的に変える手段の否定論としては、「現に20世紀には河川の流路変更など、もっと小規模な自然改変の試みが無数にあったが、たいてい悲惨な結果に終わっている」という。
 「CO2排出論が現状レベルのままでも、地球温暖化は従来の予想より急速に進む」という。

 他の手段では気候操作がある。「65年には、気候を改変して過去の気温上昇を相殺する方法を検討した報告書が、リンドン・ジョンソン米大統領に提出され」、「この案はその後、科学者の間に広まったが、90年代には議論の対象から消えた」。「大きな理由は、排出削減の合意を築こうとする動きが政策レベルで進んでいたためだ」。「気候操作はモラルに反するという空気が強まり、議論が許されなかった」。
 「この流れを変えたのはノーベル賞化学者のクルッツェンだった」。「06年、クルッツェンは学術誌クライマティック・チェンジに論文を発表」し、「ロシアの物理学者ミハイル・ブディコの案を紹介した」。
 「ブディコは74年、飛行機を使って二酸化硫黄(SO2)を大気中に散布し、大気中の水分やその他の分子と化学反応を起こさせて、火山灰と同じ性質の硫酸塩をつくるというアイデアを提唱した(クルッツェンは飛行機よりも気象観測気球の利用を推奨している)」。
 「クルッツェンの推定によれば、気温を大きく下げるために必要なSO2の量は驚くほど少ない」。
 「大気中のCO2濃度はいずれ産業革命前の水準の2倍に上昇、550ppmに達するとみられているが、およそ150万トンのSO2があれば、その影響を相殺できるという(現在のCO2濃度は385ppmだが、何らかの地球工学計画が実施されない限り、さらに上昇することは避けられない)」。「ピナトゥボ山が放出した2000万トンに比べて、はるかに少ない量だ(この噴火で放出された火山灰の大半は地表付近で『浪費』され、気温への影響はなかった)」。「別の研究者は500万トンのSO2が必要だと試算するが、それでも数十億ドル掛けて飛行機部隊を飛ばせば、散布は不可能ではない」。

 「06年にイギリスで発表された報告書によると、地球の気温を安定化させるのに必要なCO2排出削減のコストは、世界の年間GDP(国民総生産)の合計の約1%」という。「中には4%という推定もある」。
 「太陽光を遮って地球を冷やす案はそれよりはるかに安く、GDPの0.001%で済む」。
 ハードルが低いのは、気候操作のほうかもしれない。ただし、大きな落とし穴はないのだろうか。

 地球工学の反対派は、「多くの厄介な副作用が生じる」と主張する。「例えばSO2にはオゾン層を破壊する欠点があり、南半球の人々は有害な紫外線にさらされる」というのだ。
 「汚損層の破壊がどれほど進むかについては、まだ議論が続いている」。「ピナトゥボ山の噴火は、南極上空のオゾンホールをわずかに拡大させただけだった」。「だが一部の研究によると、SO2を大量に散布すれば、南極上空のオゾンホールを拡大させるだけでなく、北極上空にもオゾンホールをつくり出す可能性があるという」。
 「この問題を回避する方法の1つは、影響を見極めながらSO2を少しずつ散布することだ」。「このやり方ならオゾン層に大きな損傷が出た場合、実証実験を中止できるし、そうすれば散布したSO2はすぐに消える」。

 人口的に変える手段として、「気候を人工的に変えること」があげられる。「大気中にあるCO2を回収することと、太陽エネルギーを反射して気温を下げること」だ。
 「地球工学のなかで比較的まともなCO2の回収という選択肢は、ほかの案よりコストがはるかに高く、急激な気温上昇を緩和できる可能性も低いこと」だ。
 「新たなガスの大気排出も設備や装置の追加も必要ないため、実証実験が制御不能に陥るリスクがずっと小さいから」だ。

 「石炭火力発電所のCCS技術を大気圏全体に応用できるのではないか」。
 「世界中の工場や自動車から排出されるCO2は年間約300億トン」。「それを液化して、レマン湖の容量に匹敵する地中スペースに充填するのは、4年弱の時間がかかると予想される」。「しかも、この試算はCO2排出量が毎年1.8%増加することも、過去100年間に大量のCO2が既に大気中に蓄積されていることも(具体的な量について信頼できる推定値はない)考慮していない」。
 「研究者は、地中の奥深くには液化CO2をすべて吸収できるだけの多孔質岩があると考えている」。「だが、そこまでCO2を送るには長い年月と莫大なコストが掛かる」。「将来的にはCO2の除去に掛かる費用が現在の1トン当たり200ドルから50ドルに下落すると仮定しても、現在の年間排出量を回収するだけで1500億ドルに達する」という。
 つまり、実現可能へのハードルが高いというわけだ。

 「フィリピンにあるルソン島にあるピナトゥボ山が大噴火したのは91年6月15日」。
 「成層圏に達した2000万トンの二酸化硫黄(SO2)は地球を煙霧で覆い、太陽光の一部を宇宙に反射した」。「それから数年間で地球の気温は全体で0.5度下がり、温暖化の時計の針を巻き戻した」。「ピナトゥボ山が噴火する前の100年間、人類の経済活動によって排出された温室効果ガスは地球の気温を1度上昇させていた」。
 「この冷却効果は一時的なもので地球の気温は1年ほどで再び上昇に転じた」という。
 「簡単な計算の結果、火山噴火と同じ状態を人工的につくり出せることが分かった」。「SO2をロケットで打ち上げる、飛行機で高い高度から散布する、巨大な煙突から放出する―このような方法でSO2をうまく上層大気に運べれば、すぐに気温を下げる効果が期待できる」。「コストは、最も楽観的な温室効果ガスの排出削減案と比べても1000分の1で済む」という。
 「一部の科学者は、最も効率的で副作用の少ない「地球工学(ジオエンジニアリング)」の研究に力を入れ始めた」。
 地球温暖化を食い止める、手段の一つとして注目度が高まっている。。

 「SO2のような物質を利用して、太陽光線を宇宙空間にはね返すという『ピナトゥボ効果』の応用研究」がある。
 「具体的には宇宙空間に巨大な鏡を設置して、太陽光線を地球から遮るという案が出ているが、実現には地球が破産しかねないほどコストが掛かる」。

 「最も深刻な地球工学の副作用」は、「人工的に地球の気温を下げることに成功すれば、あるいはその手段があると分かっただけでも、コストの掛かる排出削減を行おうとする政治的な意思をそぐことになりかねない」。「地球工学の熱狂的な支持者以外の人々も、CO2の排出削減や回収の代わりに、その手段を使おうと主張するだろう」。
 「地球工学を使って気温を人工的に低く保つ一方、大気中のCO2濃度が上昇し続けたらどうなるか」。「万一、大気冷却プロジェクトが突然停止するか、何らかの理由で中止されれば、急激な温暖化のリスクは倍増されることになる」。
 温暖化防止の手段は、いろいろな方向から対策をねる必要があるということだ。最後には人々の意思が大きく影響してくるということだ。

「地球にも難民にも優しいエコ・ツール「太陽熱コンロ」」
D(レプブリカ・デレ・ドンネ)(イタリア/COURRiER Japon 2009.11)

 「ネパール南東部のブータンとの国境付近の難民キャンプ」。
 「オランダに本部を置く難民問題を扱うNGO、オランダ難民基金が援助にあたることになった」。「最も難民が多いベルダンジのキャンプを対象に、2500基の太陽熱コンロが導入された」。
 「この太陽熱コンロは鏡面状になった表面に太陽光線の熱を集め、その熱で金属板を温める仕組みになっている」。「この金属板の中央部に鍋を置けば、食材に熱を通すことができるのだ」。「パネル型と反射鏡型のどちらの型のコンロでも、米や豆類と野菜を使った食事であれば、1時間で調理できる」という。「またこのキットには、本体と同じ鏡面仕上げのアルミニウム製のケースが複数付属している」。「このケースの中に入れておけば、食べ物を8時間以上も保温することができる」という。
 「太陽熱コンロには、穀物や豆類のようなプロテインが多く含まれる食品の摂取を促進する効果もあ」る。「それを使って食物を調理するときの平均温度は、食物に含まれる養分を壊さずにすみ、高い栄養分を吸収できる」という。
 「灯油を使わないということは、一食調理されるごとに、0.64kgのCO2排出量が削減される」。「調理用の燃料源として焚き火を使わない太陽熱コンロは、CO2の排出量をゼロにすることが可能だ」という。「地球上ではいまだに20億人もの焚き火を使わなければならない生活を送っている」という。

 「森林伐採と、それに伴ってとりわけモンスーン地帯で起きる土壌の浸食や、山崩れ、地滑りといった環境破壊の防止にも役立」つ。
 「まさしくネパールのような国のことだ」。「この国の森林の伐採率は世界で最も高いうちの一つに数えられ、雨季のたびに何千haもの肥沃な耕地が地滑りを起こしている」。「そのため政府は、数年前にキャンプの住民たちに対して、近隣の森林で薪を集めることを禁止した」。
 「重要なこととして、水を飲む前に煮沸する習慣も身についた」。「こうして難民キャンプの全体的な健康水準は、飛躍的に向上した」。

 「『緑の使命』と呼ばれるこの目的のために、NPO団体、ソーラー・クッカース・インターナショナルは数年前から、国連、ユネスコ、そしてイタリアのドン・ボースコも含めた世界の有力NGO団体と共同事業を展開している」。
 「この共同事業では、ネパール南部の難民キャンプでのプロジェクトの他に、チャドのスーダン=ダルフール紛争を逃れた人たちが暮らす難民キャンプへの太陽熱コンロの配布を行っている」。「このおかげで、女性たちは焚き火を集めるために自分たちの居住地から遠くまで出かける必要がなくなった」。「そのことで敵対勢力から性的暴力を受けたり、殺されたりする危険に身をさらさなくてよくなったという」。

 ケニアで「手つかずのまま残っている森林は、国土全体の3%に過ぎない」という。

「レーザー照射による「核融合発電」」
ニューヨーク・タイムズ(USA/COURRiER Japon 2009.8)

 新たな発電が注目されている。
 「国立ローレンス・リバモア研究所内に新設された国立イングニション・ファシリティ(NIF)」。「政府の資金援助を得て作られたNIFは192基の巨大レーザー照射機を擁しており、旧来の核融合システムの50倍もの出力が得られる」という。
 金の缶の中には「胡椒粒ほどのプラスチックの球(ペレット)が入って」おり、「その中に冷凍水素を充填」。
 NIFの仕組みは、「192基のレーザー照射機が製鉄の潜水球のような目標室にレーザー・エネルギーを照射する」。「この目標室の中心に、例の金の缶が置かれ」、「内部のペレットがレーザーによって熱せられ、圧縮されると、温度は4億4500万度にも達する」。これは「太陽の中心部よりもはるかに高い温度」である。
 「重要なことは、つぶれたペレット粒が膨大なエネルギーを放出し、それが液体塩を熱して、膨大な量の蒸気を発生させること」。「それがタービンを回して発電するのは、火力発電と同じ原理」であるが、「このエネルギーならCO2を出さないし、安全で、現在の送電網にそのまま繋ぐことができる」という。

 「NIFが向こう2~3年に達成したいとしている目標は、192基のレーザー照射を繰り返し、注ぎ込まれるレーザー光線以上のエネルギーを発生させること」。これを『エネジー・ゲイン』と呼ぶ。
 「次のステップは、政府と民間からの資金助成を得て、パイロット版の核融合発電所を作って実験すること」。「これに成功すれば、民間電力会社も“ミニチュア版の太陽”を作って商業ベースに乗せることができる」。「パイロット版の核融合原子力発電所の建設費用は100億ドル(約9500億円)」となり、通常の原子力発電所とさほど変わらないという。

 「レーザーによる核融合発電設備」は、「風力発電や太陽光発電並みにクリーンでありながら、火力発電並みの安定性があり、原子力発電のように核廃棄物を出さない」といったメリットがある。

「太陽光を利用して水不足を解決!」
イル・ソーレ24オーレ(イタリア/COURRiER Japon 2009.8)

 環境問題が深刻になっている現在、従来の発電に換わる発電に注目が集まっている。
 そのヒントになるのが、太陽光である。

 「太陽の方角を向いた集熱用の曲面鏡が長い列を作って並んでいる」。「集められた光は塩化アンモニウム混合液が流れるパイプを熱し、その温度は550℃にも達する」。「パイプは熱の貯蔵槽に通じており、発電機にエネルギーを供給する」。
 「こうして作られた電力が逆浸透膜のポンプを駆動させ、海水を脱塩処理し淡水化する「。これが、「1年前にエネル(イタリア電力公社)がシチリア島に設立した淡水化プラント『アルキメデス』の仕組み」である。
 「従来の太陽熱エネルギーでは350℃の合成オイルを循環させるシステムだったが、塩化アンモニウム混合液を利用することで、日が射さない夜間の蓄熱の問題も解決の見通しがついた」という。

参考記事

・「日本の環境対策技術は世界一」/普通の国、普通の人。
・「環境危機時計」/陶邑春樹の環境問題blog
・「CO2排出量削減」/情報インフォメーション 「記録の法則」

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