アメリカはどうなってしまうのか(下)

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 超大国アメリカ。これからの時代はアメリカの時代だとはいえなくなってくるだろう。
 新興国の台頭が目立つアメリカ、これからの課題はどういったものがあるのだろうか。

アメリカよ、どこに行く 32
「バーナンキの未完の使命」
ポール・クルーグマン(COURRiER Japon 2010.2)

 世界的な金融危機に陥った現在、その解決の出口を模索中である。
 アメリカの「昨年11月の非農業部門の雇用者数が前月比でわずか1万1000人減にとどまったとする、12月発表の雇用統計の見かたを改めるべきだ」という。

 「景気後退が始まって以来、米国が失った800万人分の雇用を計算に入れるだけでは充分ではない」。「米国の人口が増えている以上、月10万人を上回るペースで、さらなる雇用を創出しなくてはならない」。
 「これは米国が毎月大量の雇用を創出しない限り、完全雇用に近い状態に戻ることはないという事実を示している」。
 「米国は今後5年間で約1800万人分、つまり月30万人分の雇用を創出する必要がある」というのだ。

「アルカイダより怖いのは国民の過剰反応だ」
スティーブン・フリン(国家政策センター所長/Newsweek 2009.12.30/2010.1.6)

 「9・11テロから8年以上たち、アルカイダの再攻撃はない」。「空港の検査は日常業務と化し、緊張感も薄れ気味」で、「雇用や住宅ローン、医療保険に関する懸念が炭疽菌や自爆テロへの不安に取って代わっている」。
 「普通のアメリカ人は自爆テロよりハリケーンや地震、山火事の犠牲になる可能性のほうが高い」。「母なる自然と肩を並べるほどのテロ行為はほとんど考えられない」。「とはいえ、テロの脅威が消えたわけでもな」く、「08年の調査では、アメリカの外交政策専門家100人のうち3分の2近くが、今後5年以内に破滅的なテロの可能性があると答えた」。

 「アルカイダやその模倣者は、今もアメリカを攻撃しようと必死だ」。「だが逮捕や殺害でアルカイダ幹部の数は減り、残った指導者もパキスタンに身を隠している」。
 「テロの脅威は根強く、進化している」。「9月に、ニューヨークでテロを計画していたナジブラ・ザジが逮捕されたことからもそれは明らかだ」。

 「しかし何より怖いのはテロではなく、アメリカ人の過剰反応だ」という。「国家的トラウマになるような事態が起きると、政府は間違いを犯すことがある」。「9・11テロ発生時には、米政府は航空機の運行を全面的に禁じ、国境を閉鎖し、結果的にアメリカ経済の流れを止めた」。
 「全てを的確にこなせる政府など存在しない」。「しかも今の米情報当局には、テロと戦うために必要な情報を収集する能力が欠けている」。「官僚同士の争いが続く、CIA(中央情報局)の情報部員は不足し、国境管理も万全ではない」。
 「ブッシュは『テロ対策はプロに任せろ』という態度で、一般国民を脇に追いやった」が、「それは大きな過ち」だった。「国内でテロ活動の阻止に成功したケースのほぼ全てが、一般人の手柄だった」。

 「わずかな資金で大きな効果を生むという確信がある限り、テロはアメリカの敵にとって魅力的な手法であり続ける」。「そして人々が自らを無力だと思う場合にのみ、テロは効果がある」。「だからテロを阻止するために重要なのは、国民がテロ活動を発見し、阻止する能力を上げることだ」。「そして国全体は過剰反応する可能性を減らすこと」である。

現場から
「戦士米兵の棺 撮影解禁」
田村栄治(DAYS JAPAN 2009.5)

 「米兵の戦死者は、同時多発テロ以降、アフガニスタン・パキスタン・ウズベキスタンの3国で計600人を超え、イラク戦では4200人にも上る」。

 ブッシュ(父)政権時、「湾岸戦争を始めた直後の91年2月に、それまで比較的自由だった棺写真の撮影を禁止した」。「死者と遺族のプライバシーを保護し、関係者に余計な負担を与えないため」というのが理由にあげられる。
 「パナマ侵攻で戦死した米兵の遺体がドーバー基地に運ばれた際、米3大テレビ局は画面の半分でその模様を中継。もう半分で、同時刻に記者たちと談笑する大統領の姿を映し出した」。このことがきっかけで「ブッシュ大統領は大恥をかき、元軍人や遺族たちから非難を浴びた。
 これが決定の撮影禁止の2年前。「さらなる失態と国民の批判を防ぐため、ブッシュ氏は湾岸戦争から、メディアを排除したとされる」。

 クリントン政権では、「ケース・バイ・ケースで棺の撮影が許され、国防総省が写真を提供することもあった」という。
 ブッシュ(息子)政権ではというと、「例えば同時多発テロで死んだ軍関係者については米軍が棺の写った写真を公表」。
 これらのように、「ときの政権は、世論誘導に都合がいいと判断した場合、棺の写真を多いに利用してきた」といえるだろう。
 「『テロとの戦争』を掲げ、徴兵制がない中で大量派兵を続けるブッシュ政権にとって、よりどころは愛国心と、米軍は最強というイメージ」。「戦争の真の犠牲を露にして戦意を喪失させ、戦地では死ぬかもしれないという恐怖を植え付ける棺の写真は、極めて都合が悪い」ものだ。
 このことがあり、「2001年10月のアフガニスタン侵攻から間もなく、国防総省はドーバー基地での撮影禁止を徹底。03年3月にイラクに攻め込むと、禁止措置を他の基地にも広げた」。

 オバマ大統領は今年2月、「国防総省が1991年から禁止してきた、米兵の棺の写真や映像の撮影と公表を、遺族の同意を条件に解禁」した。
 「米メディアの世論調査(03年と04年)で約6割が支持する棺写真の解禁だが、軍関係者には反対の声が大きい。米兵とその家族がつくる団体が今年2月に会員にメールで調査したところ、解禁に反対は64%に上り、賛成は12%」という結果だったという。

「オバマは銃規制派は裏切った」
マイケル・イジコフ、スザンヌ・スモーリー(ワシントン支局/Newsweek 2009.4.22)

 アメリカでは銃問題が、事件が起きるたびに、持ち上がっている。
 そうした中、「城署不安定な人物が高性能の武器を簡単に手に入れられることについて、政界の有力者が問題を提起したこと過去にはあった」。

 さらに、「アルコール・たばこ・銃器取締局(AFT)は近年、外国製の攻撃用銃器の輸入をほぼ解禁」したという。これにより、「ルーマニアやブルガリアなど東欧製の安価なAK47が大量流入している」という。
 銃社会化が進む要因にもなっている。

 「昨年の大統領選の予備選中にバラク・オバマは、一部の自動小銃の規制を復活させるという公約を掲げた」。この「攻撃用銃器規制は民主党が過半数を占めていた議会で94年に失効」しているという。
 今回の公約が実現するのも暗雲な雰囲気が漂っている。
 しかし、今のところ「オバマ大統領も政権幹部も銃規制の問題を完全に棚上げしている」。
 「エマニュエルはクリントン政権時代に攻撃用銃器規制法の成立に協力した」過去がある。
 「厳しい銃規制を主張してきた多くの政治家は、オバマ政権幹部も含めて沈黙を守っている」という。
 銃の団体の影響力が大きいことがうかがえるだろう。
 銃問題を早急に取り組みべき課題であるか、どうか。
 「民主党のキャロリン・マッカーシーは政権移行チームに銃規制の強化を求めたが、『後でやる』という反応であった」という。
 「エリック・ホルダー(司法長官)やヒラリー・クリントン(国務長官)、ラーム・エマニュエル(大統領首席補佐官)のような人々」が口を閉ざしたわけだ。

 これらの背景には、ナンジー・ペロシ下院議長、ステニー・ホイヤー院内総務らの下院民主党指導部は、「下院の過半数維持に欠かせない存在」である、「地方の選挙区を地盤とする穏健保守グループ『ブルードッグ』を評議を絶対に死守したい」という思惑がある。
 こういった政治的事情があるため、「民主党が銃規制問題で煮え切らない態度を取る」。

 「ホルダー司法長官は今年2月、アメリカ製の銃がメキシコの麻薬組織に流れるのを防ぐために攻撃用銃器規制法の復活を訴えた。これに対し、NRAはすぐに激しいロビー活動を開始」した結果、「下院では65人の民主党議員が銃規制への反発を誓う書簡に署名した」という。
 これはNRAの影響力がわかる具体的な例であるだろう。
 その署名の結果、「数日とたたないうちに、ホワイトハウスから司法省の職員に対し、攻撃用銃器の問題を『話すな』という指示が出た」という。
 少なくともNRAは「過去20年に比べ、自分たちの議会への影響力は強まった」という。

 「連邦最高裁は昨年、憲法修正第2条で保障された武器を持つ権利を再確認する判決を出した」。それに対し、「NRAは、銃規制を弱める議会工作を展開」。
 その工作の影響か、「上院は、アムトラック(鉄道旅客輸送公社)の列車内に条件付きで銃の持ち込みを認める修正法案をこっそりと可決」。さらに「首都ワシントンで施行されている銃規制の撤廃も可決」した。
 銃規制を厳格にするだけでは問題は解決しないかもしれない。
 新たな問題として、「銃の所持を違法にすれば、法律を無視する人間だけが銃を持てるということになる」という意見を持つ人もでるかもしれない。

参考記事

・「GMは再建できるか」/まいにちまいにち
・「アメリカ医療保険改革改訂法案」/アメリカ開業医の独り言

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コメント

  1. 智太郎 より:

     こんにちは・・・今日は土曜日!いい天気なんですが、もの凄い風です。家に居たら郵便で過去の:建築現場監督派遣会社:(法律事務所通して)記事の削除依頼が来て7記事も削除するハメに(>_<)・・まぁブログ終了は嫌だし削除しました。会社を設立するにあたり、経営学を学ぶ様に心がけてると「世界10大リスク」で「鳩山政権」が5位に!そして日本人は諸外国の人からの好感度が良いらしいのです!太陽光発電を導入するにあたって水着:ビキニにも太陽光発電を?かよ?・・と言う主旨で記事にしました。タイトルは『地域密着型福祉事業と太陽光発電を併せ 起業 独立を目指す:5』です。毎度のユニーク:おもしろ画像写真では、「猫も驚いた世界10大リスク」「4カ国(日本・中国・韓国・台湾)に対する好感度」「好感度がいい日本人データ」「女性の水着にまで太陽光発電機を導入してる」デジカメ写真画像を貼りました。・・どうぞ!遊びに寄って見てやって下さい。\(^o^)/・・恐縮にも、よろしければ:1言コメントと応援もよろしく頼む次第です。

  2. 谷口 永治 より:

    >智太郎さん
     コメントありがとうございます。読ませていただきます。

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