ウクライナ大統領選を経て、ヨーロッパとロシアの関係を追う

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 1月7日にウクライナ大統領選の決選投票が行われた。
 結果は、親ロ派ビクトル・ヤヌコビッチ氏が当選した。オレンジ革命を起こした選挙のときから、ウクライナはヨーロッパとロシアの影響を受けてきた。
 ウクライナがどうなっていくのか。ヨーロッパとロシアとの関係はどうなのか。アメリカとロシアはどうなのか。

「親ロ派ヤヌコビッチ氏が大統領になるウクライナはどうなるのか」
谷口永治

 ウクライナの大統領選の決選投票が、1月7日に行われた。中央選管管理委員会によると、開票率99%で親ロシア派野党党首のビクトル・ヤヌコビッチ前首相の得票率が48.73%、ティモシェンコ首相の得票率は45.68%という結果になり、ヤヌコビッチ氏が当選した。
 全欧安保協力機構(OSCE)の選挙監視団は今回の選挙に関して、「民主的な選挙だった」と評価、北大西洋条約機構(NATO)やロシア中心の独立国家共同体(CIS)の監視団も評価した。
 両候補の票差は約88万4000票になったという。

 この選挙結果を受けて、ティモシェンコ陣営は再投票を求め、提訴する構えだ。
 ティモシェンコ陣営は「訴訟に敗れた場合にのみヤヌコビッチ氏の勝利を認める」とし、最高行政裁で再投票や一部地域での票の再集計を求める構え。「100万人以上が正規の手続きを経ずに在宅投票した他、大量の投票用紙が毀損された。千以上の選挙区で不正の疑いがある」からだという。

 さて、ヤヌコビッチ氏が大統領となったウクライナはどうなるのだろうか。

 ヤヌコビッチ氏は公務でもプライベートでも「じっくり考え、ゆっくりとした口調で話す」人物だそうだ。そして、旧ソ連の政治家を彷彿とさせる調整・根回し型の実務派であり、地元の工業大学を卒業し、小さな輸送会社を任せられたことがきっかけとなり、世に出るきっかけとなった。
 そんなヤヌコビッチ氏であるが、貧乏で暴力的な父親に育てられ、青年期には傷害罪で服役した経験を持つ。

 ヤヌコビッチ氏はユーシェンコ現大統領が推進した北大西洋条約機構(NATO)加盟の撤回や、ロシア語の地位向上を訴えており、ウクライナに駐留するロシア黒海艦隊についても、現政権が主張してきた17年の貸与期限切れに伴う撤退要求を見直す可能性を示唆するといった外交の軌道修正を図っているとされる。
 欧州向けガスパイプラインの運営会社にロシアなどの出資を仰ぐ意向もある。その代わりに「ガス代金の値引きと欧州向けガス輸送料の値上げを求める方針」。
 親欧米路線を維持しつつ対ロ関係の改善を唱えたティモシェンコ氏に比べ、ヤヌコビッチ氏はさらにロシア寄りの姿勢をとっている。

 しかし、新政権の外交方針として、
①欧州への統合
②ロシアとの関係改善
③軍事同盟への不参加
の3本柱で、「目標は政治・経済面での欧州基準の達成。NATOにも加盟しないが(ロシア主導の軍事同盟)安全保障条約機構にも加盟しない」という。ロシアに全面的に傾いているわけではない。

 その背景には、政権基盤であるウクライナ東部の重工業地帯の「オリガルヒ(少数の新興資本家)」がいる。そのオリガルヒは欧州市場でロシア企業と競合する立場にある。そのため、経済危機の中で、ロシアから輸入する天然ガス価格の値下げを求めており、新大統領は少しでも高くガスを売りたいロシア側との難しい交渉を迫られるだろう。
 ロシアとの関係改善なくして経済の再生は難しいが、ヤヌコビッチ氏の支持基盤であるこうした勢力はロシアにのみ込まれる事態を警戒しているわけだ。
 ウクライナの状況は政界の汚職構造は改善されていなく、世界的な経済危機の影響で財政は破綻の瀬戸際に追い込まれている。昨年、国内総生産(GDP)は前年比約14%減に落ち込み、財政赤字も拡大している。

 そんな状況のウクライナ情勢であるが、気になることがある。
 ウクライナの情勢をめぐって、ヨーロッパとロシアの関係が気になるところだ。ウクライナは人口約4600万人で、親露的な東部・南部と親欧州の西部で世論が二分されている。
 04年の選挙では「オレンジ革命」を支持する中西部と、反対する東部が鮮明に分かれ、「国家分断の危機」も取りざたされたほどだ。その後、リビウ州にもロシア資本の進出が進むなど、融合への流れも生まれたが、今回の選挙結果は改めて東西対立の根深さを感じさせる結果になった。
 中央選管の州別暫定集計によると、ヤヌコビッチ氏は地元ドネツク州など東部の重工業地帯、ロシア語系住民が多数派を占める南部のクリミア半島などで70~90%の得票率を収めた。

 こうしたことから、ウクライナをまとめるのは非常に難しく、地理的要因も影響して、ヨーロッパとロシアの関係がウクライナで渦巻いている。

「財政難で軍縮するヨーロッパの不安」
(中庸総局長/Newsweek 2009.8.5)

 「昨年の世界の兵器売上総額は、景気後退にも関わらず4%増加」という結果になった。

 世界の軍事支出1位は「アメリカで6070億ドル」、2位は中国で850億ドル、「ロシアは旧ソ連並みの軍事力復活を目指して軍事予算を拡大中で586億ドル」。

 「ヨーロッパ各国の政治は資金繰りが苦し」く、「大衆受けする社会福祉政策を強化するため、軍事費を大幅に削減している」という。「今年は既にイタリアが約7%、スペインは約4%削減している」。「イギリスでも今後、年間約600億ドルの軍事費が最大25%削減される可能性がある」という。
 「フランスは昨年、軍事支出が総額657億ドルとイギリスを上回り、12年の支出増を盛り込んだ予算も成立」。「ドイツも微増の計画だが、ヨーロッパではアメリカやアジアよりも景気後退が長引きそうで、仏独の計画はいずれも現実味が薄れている」という。

「オバマがてこずるつれない相手」
(Newsweek 2009.7.8)

 今、アメリカと中国の関係に注目度が高くなっているが、アメリカとロシアの関係の行方はこれからも注意する必要があるだろう。
 「ロシア国民は、親善を呼び掛けるオバマの言葉をアラブ世界ほどすんなりとは受け入れないだろう」。それは、「ロシア政府が長年にわたって積極的に反米プロパガンダを推進してきたという事情がある」。
 「最新の調査によれば、モスクワに住む富裕層の10代の半数近くが、アメリカを『敵』と答えたのは25%に満たなかった」という。
 要するに、オバマに対して、好印象を持っていないというわけだ。。

 メドベージェフは2009年6月、「上海協力機構(ロシア、中国、中央アジア4ヵ国)の首脳会議、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)首脳会議、ロシアと周辺諸国の軍事同盟である集団安全保障条約機構の首脳会議を相次いで主催」。「こうした外交活動の成果として、旧ソ連圏諸国の間での共同緊急対応部隊や地域関税同盟の設立が進められている」。
 これは、欧米に対しての機構体制などを強化している。

「冷戦終結20年 なお不信感 欧州「人権重視を」」
大木治(モスクワ/毎日新聞 2009年12月10日(木))

 「冷戦時代の75年に採択された『ヘルシンキ宣言』は、戦後欧州の国境不可侵とともに、人権擁護という『共通の価値観』をうたい、『壁』を崩す出発点になった」。「この時にソ連の人権侵害を告発するため発足したのが『ヘルシンキ・グループ』だ」。「やがて東側の共産体制は崩壊し、民主化への期待が高まった時期もあったが、今のロシアでは『大国復活』の自信を背景に『欧米の価値観の押しつけ』への反発もあり、人権活動への支持は広がっていない」。

 「ソ連崩壊後の混乱の時代は、同時に情報公開や民主化が進み、欧米の支援で人権活動が活発になった時代でもあった」。「しかし、00年のプーチン政権発足後、強権統治に批判的なこうした団体への締め付けが厳しくなり、活動家への襲撃事件も相次ぐようになった」。

 「メドベージェフ大統領は放置の徹底と市民団体への支援を約束しているが目に見える成果はなく、人権を重視する欧州をいらだたせている」。

参考記事

・「「ウクライナ陥落!」 汎スラヴ主義はバルカン半島へ一直線」/青革の手帖
・「政治も芸能ニュースも・・・・・・」/面白き ことも無き世を

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