不況から脱しつつあるのか報道機関

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 不況により報道機関が窮地立たされている。
 そんな中、出口を見いだしつつある、報道機関も出てきているようだ。

 これまでのやり方ではなく、新たなる方向性を展開しつつある報道機関の姿が見えてくるのだが、そこにデメリットも存在する。
 報道機関がなくなれば、私たち自身にも大きな影響を与えるわけであるが、改革も必要なのが、報道機関。

「凋落する新聞を尻目に拡大戦略を取る通信社のビジネスモデル」
エコノミスト(UK/COURRiER Japon 2009.7)

 金融危機は世界中を苦しめているわけであるが、もちろんマスメディアも苦しんでいる。マスメディアはニュースを扱う。日本ではあまり普通ではないが、外国ではニュースは「たいていの場合は、『通信社』から来るもの」。「新聞やテレビ、ラジオ、ネットなどで流れるニュースの大部分は、大手通信社が収集した情報に基づく」。

 その通信社でも「世界最大の国際通信社であるAP通信とロイター通信の歴史は、電信技術の普及で、迅速な情報収集が可能になった19世紀中葉にまでさかのぼる。従来、通信社はニュースの卸を請け負う立場にあった」。そして、「これまでも、新聞、放送局やウェブサイトは小売業者としての役割を担い、通信社の配信記事と独自の取材記事を組み合わせ、読者や視聴者に届けていた」わけだ。
 「今でも、加入者による協同組合への支払いで成立」しており、少数ではあるが、「AP通信や国営フランス通信(AFP)などの一部の通信社は、新聞媒体に情報を販売している」。

 ロイター通信は、金融系の通信社で、「ダウ・ジョーンズ・ニューズワイヤーズに倣って、迅速で精密な付加価値の高い金融情報の提供に力を入れ、一大ビジネスの確立に成功」。最近では、「金融情報の提供者として創業したブルームバーグも、一般の情報も取り扱うニュース通信社へと発展」し、「世界各地に支局を置き、国際的なネットワークを構築し、新聞媒体に情報を販売している」。

 そうしたことから、通信社の影響が大きくなっており、新聞社の役割が厳しくなってきている。
 「昨年度にAP通信が得た収益のうち、新聞社から得た割合は『1985年頃の55%と比較して、25%にまで減少した』」という。
 さらに、「ウォール・ストリート・ジャーナル紙のオーナー企業であるニューズ・コーポレーションは、ダウ・ジョーンズ・ニューズワイヤーズのインド支局などで増員を発表している。同様に、外国語版を製作するブルームバーグも支局で1000人の新規募集をしている」という。
 「テレビニュース・ネットワークのCNNに至っては、AP通信とロイター通信のライバルとなるような国際情報通信社を創設する計画を立ち上げている」というのだ。
 新たな波ができつつありお、既存の新聞社は脇に追いやられつつ、状況は悪化する一方で、「取材人員の削減を余儀なくされた新聞社が、今まで以上に通信社の配信ニュースに依存する傾向を強めている」。

「こんな時代に最高益!独・新聞社の新しいビジネスモデル」
ニューヨーク・タイムズ(USA/COURRiER Japon 2009.7)

 マス・メディア、特に新聞社の業績は悪化をたどる中で、「ドイツでは、欧州最大の発行部数を誇る日刊紙ビルトの発行元アクセル・シュプリンガー社が、創立62年で最高益を記録」したという。

 「昨年は欧州でも、シュプリンガー社ほど立派な業績を上げた新聞社は少ない」。しかし、そのシュプリンガーでさえ「今年は景気後退の影響が深刻で、厳しい状況」になりそうだ。
 メディアの状況はヨーロッパでも深刻で、「欧州諸国の中にも米国よりひどい状況におかれた新聞社」もあり、「フランスでは数社が公的資金を受け、かろうじて生き残っている」という。「競争が熾烈な英国では、全国紙が業績不振に苦しみ、地方紙はどんどん姿を消しつつある」という。
 厳しい状況には変わりがないが、ただ、「米国より発行部数の落ち込み方」が緩やかである点が好材料である。その背景には、「欧州の新聞は、移り気な広告主より読者に支えられている面が大きい」ため、「米国の新聞ほど景気後退の影響が深刻ではない」。

 そんな中、問題解決の糸口を見出した新聞社がある。
 「ノルウェーのメディア大手シブステッドは、新聞や広告を含むオンライン部門が会社の収入の4分の1を稼ぎだし、利益の大半を占めている。中でも好成績を上げているのが、タブロイド紙ヴェルデンスガングと提携するウェブサイト『VGネット』である。このサイトは利益率30%を超え、ノルウェーで最も人気のあるウェブサイトとしてグーグル」と競い合っている。
 「VGネットは多くの新聞のウェブサイト同様、収益の大半を広告に依存しているが、利用者への課金にも乗り出している。オンラインのダイエットクラブの年会費として、約15万人が最高599クローナ(約8000円)を収めている。最近では、サッカーの試合のライブ映像のストリーミング視聴料として、年間780クローナを徴収するようになった。ソーシャルネットワーク部門では、プロフィールをアップグレードする際にメンバーから料金を取る」形になっている。ただし、「ニュースは依然として無料」である。

メディアを裁く!CJR特約 第184回
「「スクープ」と「ウェブサイト」で復活したウォールストリート・ジャーナル」」
(SAPIO 2009.7.22)

 ルパート・マードック氏によるウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)の買収が話題になった。多くのジャーナリストがマードック氏の脅威を感じ、ジャーナリズムの低落が懸念された。
 深く掘り下げた記事が魅力であったWSJであったが、財政状態は厳しい状態に陥っていた。そこに、マードック氏が目をつけた。

 「グローバル経済危機の中にあって、これまで以上に高い質の経済・金融ニュースへのニーズは高い」。しかし、「WSJはむしろ逆に、深く掘り下げたレポートやエレガントで知的な文体を捨て、記事の思い切った簡素化と、スクープを中心に据えた編集に転換した」。その結果、経済危機の中、「読者を7%増や」すことにつながった。
 この結果は編集方針だけではない。「投資家らしく、マードック氏はグローバルな事象に敏感なセンスを持っている」。WSJを国際的な新聞にしようと、「ロバート・トンプソン氏に外国ニュースのために600万ドルを新たに投資させた」。「これも他の新聞の真逆のやり方」である。
 さらに、大きな変革をもたらしたのは、同紙のウェブサイトがあげられる。「読みやすい記事を掲載し、ゴシップや辛口批評もある」。
 「スクープ情報を重視することについては、トレーダーなど、通信社の有料ニュースサービスに加入するような人たちは、秒の単位でニュースを欲しがる」ことから、WSJもそこに関わることができ、「どれだけ通信社に話題を提供したかで評価される」というわけだ。
 その結果、「ウェブサイトの読者は以前に比べて84%伸び、有料会員の登録者数は100万人を超えているという」。

 当初、恐れられていた、「マードック氏の支配力が強まることで、彼の政治思想やビジネス上の利害に関係した紙面作りを要求されること」は、実際起きていないという。
 「かつてWSJの看板だった深く掘り下げた長大なレポートは軽視」されつつあり、「過去の記事を閲覧できるライブラリも閉鎖された」。
 「最近のニュースは、およそ400語から500語で書くことを求められる」。「買収前には2000語以上の記事が毎週10本以上あった」が、「今はそれだけの長さの記事は週に3本ほどしかないという」。

 経済危機で報道機関につき付けられたことに、「アメリカには、読者のための新聞というより、ジャーナリストのための新聞になっているものが多い」ということだ。

参考

・「日本のメディア」/揚州(輝)の声
・「出版不況は時代の流れと言えない理由」/団塊世代の定年退職記
・「報道にも事故調査委員会」/報道を3人称でみてみた

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