アメリカとロシアの関係を忘れてはいけない

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 現在、アメリカと中国の関係が注目されている。
 しかし、忘れてはいけないのは、アメリカとロシアの関係である。

 ロシアは現在でも大きな影響力を持ち、アメリカだけでなく、ヨーロッパにも、そして、世界に影響力を持つ。
 現在、中国の勢いが大きいだけに、忘れられがちだが、この間、ロシアの動きを見ていないといけないだろう。

「オバマ流クレムリン・パッシング」
ボリス・ネムツォフ(ロシア元第1副首相、野党「右派連合」代表/Newsweek 2009.7.22)

ロシアの政治はメドベージェフが大統領に就任してから1年がたった。
 「テレビ報道は相変わらず厳格に管理されて」おり、「選挙は大々的に操作され、自主的な政治活動はほぼ全面的に禁止」され、「司法は政権に完全に追従している」状態だという。

「経済では独占と官僚化が腐敗をはびこらせ(国際汚職監視団体トランスペアレンシー・インターナショナルの腐敗認識指数でロシアはプーチン時代に、世界180ヵ国中147位へ転落)、経済活動を著しき阻害している」。

政府が発表した数字によると、「ロシアの富の主な源である原油価格は比較的高いにも関わらず、GDP(国内総生産)は4月に10%、工業生産高は5月に17%それぞれ前年同月比で減少、失業率は依然10%を超える」という。

海外ニュースの「楽しみかた」 23
「NYタイムズの”大スクープ” 「オバマ親書」から米露関係を読む」
佐藤 優

 現在、イラン問題が深刻であるが、米とロシアの動向が気になる。
 米がロシアに「オバマ親書」を送ったという。しかし、その内容は「大きな秘密取引は書かれていなかった」というのが筆者の推定。なぜなら、現在の米外交当局には「ロシアと複雑なゲームができるほど、高い能力がない」という。
 「事務レベルの信頼関係がこの程度では、イラン問題と東欧(実際はポーランドとチェコ)へのMD施設の設置中止などという、かなり機微に触れるゲームを親書で行うことはできないのではないか」ということだ。

 この「オバマ親書」がリークされたケースは「第三の場合の観測気球」にあてはまりそうだ。
 「ロシアにイランの長距離弾道ミサイル計画や核計画を阻止するための影響を行使する力はない」という。「せいぜいイランに対する協力のレベルを下げることくらい」というのがロシアの持ち札だろうと。
 つまり、そこまでロシアの影響力は大きくないということだ。

 今回のリークは「オバマ書簡の内容を歪曲して漏洩することで、イラン問題を巡る米国内と露政府の反応を測ろうとした米政府高官がいたのだろう」。
 その結果、「イラン問題を巡って、ブッシュ前政権から大きな政策変更はできないという感触を得た」。「それくらい米国、ロシア、イラン、そして陰の準主役イスラエルは、役割が固定されたゲームを展開している」。
 外交の舞台裏が垣間見える。

 「リーク(情報漏洩)には、大雑把に分けて3つの場合がある」。
 「第一は、情報を漏らすことによって、計画を潰すことを目論んでいる場合。第二は、世論の理解を求めるためにあえて非公式に情報を漏らす場合。第三は、国内世論の反応や相手国の感触をつかむため、情報を漏らす『観測気球』の場合」。

 その他にもこんなケースもあるという。
 「記者から『知らされていないのですか』と質問されてムキになり、情報を漏らしてしまう場合」や「口頭で情報を漏らすだけでなく、秘密文書を内々に記者に渡してしまう国会議員や官僚もいる」という。
 これらのケースは、「『情報を知らされていないのは重要人物ではないからだ』という独特の文化がある、日本固有の現象」であるそうだ。

 このように情報漏洩にはいくつかケースがあるのだが、「だいたい第一の『計画を潰す』という結果をもたらす」という。

「「偉大なロシア」はソ連を称える」
オーエン・マシューズ(モスクワ支局長/Newsweek 2009.7.29)

 「ロシアのドミトリー・メドベージェフ大統領は5月、政府が法律によって国の歴史記述を管理することを目指す」動きを見せた。
 その行動とは、「第二次大戦におけるソ連の勝利に疑問を投げ掛ける行為を刑事罰(高額の罰金もしくは3ヵ月の禁固)の対象とすべきだと提案」した。さらに、「大統領府長官や高級官僚、議員、軍幹部などで構成する委員会を発足させ、歴史を改ざんして国益を害する行為を阻止させることにした」のだ。
 そのもとになったのが、「60年代のソ連共産党指導部が実践した戦略」である。
 「多くの民族で構成されていたソ連にとって第二次大戦という体験は、国全体に1つの共通のアイデンティティーを持たせ、統治体制の正当性を強化する強力な道具」となった。「当時のソ連共産党指導部は、第二次大戦を偉大な戦いにおける試練を通じてソ連が1つの国家になった出発点と位置付けた」。
 そうしたことから、「ロシア政府は国内の全ての主要都市の当局に対し、5月9日の第二次大戦の戦勝記念日を前に、愛国的ポスターを大々的に貼り出すよう指示」。

 「ロシア政府の狙いは『大祖国戦争』(第二次大戦の独ソ戦をソ連側はこう呼んだ)の勝利を今日のロシアの台頭に重ね合わせること」にある。「大統領退任後も首相として絶大な権力を握り続けるウラジーミル・プーチンは、大統領時代にモスクワの赤の広場で大規模な戦勝記念日パレードを実施」。「メドベージェフも前任者の路線を引き継いで、08年のパレードに核ミサイルを加えた」。
 しかし、「今日のロシアは(少なくとも現時点では)全体主義というわけではない」。

 「政府がソ連時代とさほど変わらない『公式版』の歴史を極めて入念な方法で浸透させようとしていることは事実」だが、「昔のソ連のように有無を言わさずに政府の歴史解釈を押し付けるわけではない」。「人々が自分の頭で考えて、異なる意見を持つ自由はある」。
 しかし、「ロシアの子供たちが政府の唱える『公式版』の歴史を無批判に信じ込ませられていることは事実」。「今ロシアの学校では、スターリンが偉大な指導者で、赤軍が東ヨーロッパの人々に解放軍として歓迎されたと教えている」という。
 そして、「プーチンとメドベージェフが目指すのは、新しいロシアを築くこと」である。
 それに、「ソ連崩壊後も160以上の民族で構成されているロシア連邦で露骨なロシア優越主義を前面に押し出せば、かえって国を分裂させかねない」。

 しかし、周辺の国ではどうだろうか。
 「ロシアの近隣諸国も自国の歴史を強調し始めている」。「ただし目的はロシアとは逆に、ソ連の支配に対する国民の憎悪をかき立てることを通じて国をまとめること」だ。
 「ウクライナでは、ソ連の一部だった1930年代初めにスターリン体制化で農業の集団化が推し進められた結果、大飢饉に苦しめられた歴史がある」。
 「ソ連による支配の時代をテーマにした博物館を2つオープンさせたのはグルジア」である。「特に光を当てているのは、様々な民族が北カフカスから中央アジアの草原地帯に大量に強制移住させられた歴史であり、グルジア人の知識人がソ連体制に迫害された歴史」である「(最も、ソ連の指導者の中でも最も凶悪だったスターリンはグルジア人だったのだが)」。

 しかし、「政府の『公式版』と異なる歴史観を唱える行為を犯罪として処罰しようという国はロシアだけ」である。「ロシアのリベラル派の歴史家やジャーナリスト、反体制派活動家は、政府が新しい法律を口実にして、旧共産主義体制の罪を問題にしたり、それを調査したりする人物を迫害するのではないかと恐れている」。
 それも、状況は深刻である。「08年12月には、ロシア有数の歴史を持つ人権擁護団体『メモリアル』のサンクトペテルブルク事務所が強制捜査を受け、資料を押収された」。「メモリアルは、スターリン主義の罪を記録し、ファシズム復活の動きに目を光らせている団体」である。

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