インターネットの脅威

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 インターネットは現在、なくてはならない存在になっている。
 ビジネスの世界でも、生活の世界でも、幅広いところで、活用されている。

 このインターネットがなくなれば、多くのところで麻痺、トラブルが起り、パニックになるだろう。

 それぐらい大きな存在になっているインターネット。しかし、大きな罠があることも確か。

「インターネット時代のマーケティング論「ロングテール」は誤りだった?」
ニューサイエンティスト(UK)

 マーケティング分野でロングテール理論は一大旋風を巻き起こした。
 「米『ワイヤード』誌のクリス・アンダーソン編集長」が唱えたもので、「04年10月に発表された『ザ・ロングテール』という記事はブログになり、単行本になり、マーケティングのお題目になった」。

 「アンダーソンの前提は単純」なもので、「インターネットの登場までは、最大規模の小売業者でも、利益の出る商品を揃えるには物理的な限界がある」。それは、「店主は、限られた陳列棚の空間から最大限の利益を上げるために在庫を調整をしなければならず、消費者は与えられた商品で間に合わせるしかなかった」。
 それに対して「サイバースペースでは、陳列棚の空間は事実上、無限に等しく、他の経費も最小限に抑えることができる」。「オンライン小売業者はこの強みを生かし、誰も知らないような商品まで幅広く揃える」ことができ、「余分なコストもかからない」。
 こうしたことから、「少数のヒット商品を表すグラフの急な傾斜部分のかわりに、緩やかな傾斜ではるかに長く伸びる線を表す商品群が注目されるようになるという考え方で、グラフの形状から『ロングテール理論』と呼ばれるようになった」という。
 「これからは、ヒット商品だけでなく、『テール』の部分からもつまみ食いして生活を豊かにできる」という。

 ロングテール理論は大きな衝撃を与えたが、この理論に反論する声もある。つまり、「ロングテール理論はアンダーソンが主張するほど革命的ではない」ということだ。
 「『テール(尻尾)』は確かに伸びているが、選択肢が豊かになり、売れない商品が増えるだけ」であるという。「むしろ広く薄くなり、売れない商品が増えるだけ」で、「生産者はマス・マーケットで売れる商品に集中した方がいい」という。
 ただし、中には隠れた良書が見つかるということもあるだろう。
 「流行に主導される市場は消費者の好みが気まぐれで変わりやすく、利益を最大限にする商品の数はかなり少ない」という。
 そうした上で、「『何でも売ります』というのは、マーケティング戦略としてはいいが、それ自体が利益を生むとは考えにくい」というのだ。
 「消費者にとっての最大の魅力は、アマゾンがヒット商品を大幅に値引きすること」。

 インターネットを駆使してマーケティング戦略を行うことが必須な状況になってきたわけだが、デジタル化することによってのデメリット部分もある。
 「デジタル映像は複製が容易で、携帯電話やメール、SNSなどの効率のよいコミュニケーションが、動きも変化も速い流行を助長する。その結果、好みが同質化して、人気の高いものが大ヒットする確率が高まり、既に成功しているものがさらに成功する」という。

 面白い実験がある。
 「コロンビア大学の社会学者ダンカン・ワッツ」の研究で、「コミュニケーションと仲間の評価が音楽の嗜好に与える影響を調べるために、1万4000人の10代のボランティアをネット」で集め、「48曲から好きな曲をダウンロード」してもらう。「彼らは8つのグループに分けられ、他の人がダウンロードした曲がわかるグループや、そのような情報がないグループ」、というように条件のグループに分けられた。
 この結果、「社会的なつながりのあるグループでは、勝者が全てを独占」して、「人気のある曲はますます人気が出て、人気のない曲はますます人気が落ちた」。その一方で、「この現象は、社会的に孤立したグループではあまり明確ではなかった」という。さらに、「グループが違うと、ヒット曲も違うこと」が多いという結果も出た。
 これらの結果から、「典型的なバタフライ効果で、特定の対象に小規模の人気が出ると、高度に結びついてコミュニケーションでは、その人気が急速に増幅されて広がりやすいが、何がヒットするかを予測するのはいっそう難しくなる」。
 つまり、人気があるところになびくようになることがわかる。

 テクノロジーの発達によって便利な世の中になった。
 「現代のテクノロジーがもたらした選択肢の増殖は、私たちを解放するどころか、圧倒するほど多い」。選択をする際、「他の手がかりに頼る」ことが多くなった。

「韓国オンライン企業を襲う”サイバー暴力団”の恐怖」
時事ジャーナル(韓国)

 「これまでのハッカーの手口は、ウェブサイトをハッキングした後に個人情報を売ってカネを得る、いわば”窃盗団”レベルの犯罪」だったが、「個人情報に対する規制が厳しくなり、これまでの方法で商売ができなくなるやいなや、”強盗”」へとさらに悪質になった。
 強盗レベルまで発展するほど、メリットが大きくなってしまった。

 韓国はインターネット大国である。その韓国で最近、「”サイバー暴力団”が幅を利かせている」という。
 その内容は「ターゲットを決めると集中的にDDoS攻撃をし、”保安費用”の名目でカネを要求する」という。これは「暴力団が自営業者などに暴力をふるった後に、みかじめ料をせしめるのとまるで一緒」である。
 日本でもインターネットは重要な存在であり、同じことが日本でも起きる可能性は高いだろう。

 この犯罪の手口が横行する背景には、様々な要素がある。
 「ハッカーはウィルスをプログラミングすると、捜査機関の追跡をかわすために中国のサーバーを経由して複数の個人のコンピュータを感染させ遠隔操作をできるようにした上で、特定のウェブサイトに同時攻撃を仕掛ける」という手口が王道みたいだ。
 その被害にあった「攻撃されたサイトは、ネットワークに大きな負荷がかかるためアクセス不能」になってしまい、「結果的に顧客がサイトに入れなくなるため、企業は売り上げが落ちるばかりか、”脆弱なセキュリティー”が世間に知られ企業イメージに大きな打撃を受けることになる」。
 しかも、「攻撃の方法は日々多様化し、強力になっており、企業からカネをもらってライバル社を攻撃する”請負攻撃”を生業とするハッカーもいる」という。
 インターネットの大きなリスクになっているこの犯罪に対して、防御策はないのだろうか。

 しかし、この問題は根が深い。
 「現在、韓国のオンライン界はDDoS攻撃に対して全く無防備な状態」だという。「攻撃が予測しにくいばかりでなく、国内のセキュリティーシステムに限界があるため対応しきれておらず、中でも中小企業が格好の餌食」になってしまう。
 さらに、こうしたことは「ITインフラが整っている上、オンライン業者だけでなく一般的に企業の広告サイトへの依存度が高い韓国は、ハッカーにとってまるで天国のような場所」になってしまっているというのだ。

 これらの攻撃を受けた企業が警察に通報しない場合も多いことが悪化の要因にもなっている。。
 「昨年、複数の有名企業が、DDoS攻撃を受け警察に捜査を依頼したが、ほとんどの企業は、警察に通報せずにハッカーとの取引に素直に応じている」という。
 なぜなら、「警察に通報してしまうと、自社のセキュリティーレベルが世間に知られ、利用者からの信頼を失ってしまう」という背景があるからだ。他にも「捜査のためにあらゆる企業情報を警察に提供するのに抵抗がある」ということもある。
 そういったことから、「むしろハッカーにカネを渡して解決するほうがましだと考える企業」もあるようだ。
 悪循環のスパイラルの罠がここにある。

 「DDoSとは、Distributed Denial of Service Attackの略」で、「複数のコンピュータをウィルスに感染させることによって支配し、特定のサイトに一斉にアクセスさせるなどしてダウンさせる攻撃。攻撃元が特定しにくいのが特徴」である。

「サイバー防衛は小国の知恵で」
エフゲニー・モロゾフ(オープン・ソサエティー財団研究員/Newsweek 2009.5.6/13)

 インターネットが普通になった現在、ネット問題の深刻度が高くなっている。
 「カナダのシンクタンクが3月に発表した報告書によると、08年6月からの10ヵ月間で『ゴーストネット(幽霊ネット)』と呼ばれるサイバースパイ事件で被害に遭ったコンピューターは世界で1295台」にのぼったという。
 その「3分の1は各国の外務省や大使館、国際機関、報道機関のコンピューターで、機密情報を記録しているもの」もあり、「そのうち少なくとも1台はベルギーのカストーにあるNATO(北大西洋条約機構)の欧州連合最高司令部のコンピューターだった」という。
 これに関して、「犯人は特定できていないし、その勢力が情報を入手して実際に悪用したかどうかも分かっていない」という。

 サイバー攻撃の例でいえば、07年にエストニアで襲った事件がある。
 「エストニアは07年、旧ソ連時代に建てられた赤軍兵士像の撤去をめぐってロシアとの摩擦が強まっていたとき、大量のデータを送り付けられる形で波状的にサイバー攻撃を受けた」。その影響は「国際最大手の2つの金融機関も標的になり、オンラインシステムに数時間にわたり不具合が生じた」。
 こういった攻撃はエストニアだけに危険があるわけではなく、ネット環境が普及している国々にもいえることである。
 このサイバー攻撃による「経済的損害の規模は国家機密扱いで非公開とされているが、『Eストニア』を名乗るデジタル化先進国で起きた事件だけに衝撃は一際大きかった」という。
 攻撃の背景には、「ロシア政府が黒幕なのか割り出せるのは難しいが、同政府は捜査線上に浮上したロシア人容疑者の身柄引き渡しを拒んでいる」という。
 このことをもっと大きな視点で見ると、「この出来事が浮き彫りにしたのは、NATO諸国のサイバー攻撃に対する弱さ」であるといえる。

 こうしたネット問題の「脅威に対処するためにアメリカ、ドイツなどNATO加盟の7ヵ国は08年、エストニアの首都タリンの旧政府ビルにサイバー安全保障問題の研究施設『サイバー防衛センター』を開設」した。そこで、「30人ほどのスタッフが新種のコンピューターウイルスやその他の脅威に関して情報を収集・分析し、参加国の政府に警報を発することになっている」。
 果たして、これがうまく機能するのだろうか。

 インターネットの環境は今や大きな影響を与える。
 「今や送電網やダム、航空管制もインターネットを介して動いている」ことから、トラブルが起れば、当然これらに対しても影響する。
 「NATOがこの種の攻撃に対処する上でまず問題になるのは、ハッカーによる単なる愉快犯的行為と本当の意味での戦争行為(言い換えれば軍事的対抗措置が正当化される行為)との線引き」であるという。

 「軍事的対応に前向きなのはアメリカ」である。「これまで米政府は、サイバー空間に莫大な金額の国防予算をつぎ込んで」きている。
 「米上院は3月、『サイバー安全保障担当大統領補佐官』のポストを新設し、国家安全保障局(NSA)や空軍、国土安全保障省など十数の政府機関の関連部署を束ねさせることを盛った法案の審議を開始」したという。「法案では、この新ポストに就く人物に、必要に応じて政府機関のネットワークを遮断するなど強力な権限を与えている」という。
 さらに、米国は「コンピューターネットワークの安全確保のために米政府が支出する資金は、08年の74億ドルから13年には107億ドルに膨らむと予測されている」という。

 「エストニアが目指すのは、非軍事的な防衛体制づくり」である。つまり、「サイバー空間における安全を意識する文化」をつくりたいと考えているようだ。
 「具体的にはサイバー攻撃対策を国防省ではなく経済・通信省に担当させ、市民の意識向上のための取り組みを強化している」。
 「市民の意識が高まってコンピューターの乗っ取りが難しくなれば、サイバー攻撃は極めて困難になる」。
 「テクノロジー業界は対策ソフト需要を期待してサイバー攻撃の撲滅に消極的になりがちなのに対し、一般市民はハッキング阻止を躊躇する理由などまったくない」。
 「政府と産業界が主導する防衛体制にはサイバー攻撃を完封するだけの規模の力もないし、個々の攻撃に迅速に対応できるほどの俊敏性もない」ため、「防衛産業依存型のアメリカのやり方には不安が付いて回る」。

「ネットの「俺的ニュース」が不寛容なアメリカ人を生む」
ニューヨーク・タイムズ(USA/COURRiER Japon 2009.7)

 ニュースを知る手段は現在、多種多様である。現在、何といってもインターネットが大きな影響力を持っている。しかも、多くのニュースが更新され、さらには、それらのニュースを選べるのだ。
 つまり、「インターネットにおいては、自分が最も関心のあるニュースや意見を、ユーザー自身が選び出す」ことができ、「誰もが編集者であり、情報管理者」である。

 このような時代、様々な情報を収集し、いろんな角度から分析する必要があるが、ここに面白い調査結果(「12カ国を対象にしたもの」)がある。
 「米国人は意見の異なる人と政治について議論するのを好む割合が最も低く、特に教育水準の高い人たちの間でそれが顕著である」というのだ。「最も多様な議論仲間を持っていたのは高校中退者であり、一方で大卒者は、自分にとって不愉快な意見に触れないようしていた」という。
 さらに、こんな調査結果も出ている。「共和党員と民主党員の双方に対し、中立の情報源から得たと言って様々な政治的調査結果の提供を申し出た。両党員が最も欲しがったのは、自分たちのこれまでの考えを強く裏づける、質の高い主張だった」という。また、「ライバルの意見を擁護する、明らかにばかげた主張についても知りたがった」という。しかし、その反面、「自分たちの立場を脅かしかねないような説得力のある主張には、全くといっていいほど関心を示さなかった」という。
 こうした傾向が強くなれば、「我々は密閉された政治空間の中にますます閉じ籠もるようになり、社会の分断化が進む」恐れがある。

 「リベラル派や保守派の人は、自分と同意見の人と議論すると考え方が瞬く間に均質化し、議論する前に比べて極端になる」という研究結果もある。「例えば、リベラル派だが、地球温暖化対策は貧困層にとって負担になると憂慮していた人が、同じリベラル派の人と議論」をした場合、「15分もすると、その人は温暖化対策をより重視するようになった」という。
 これらの問題の解決の糸口はというと、「私たち一人一人が、批判すべき意見を持つスパーリング相手と知的な練習を積み重ねること」である。

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