ロビー活動は果たして(From SAPIO 2009.4.22)

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「企業と献金とロビー・EUの場合」

 「最近までEU諸国の多くでは政治献金は自由だった」という。「フランスは1994年に企業献金を全面禁止にしたが、英国ではブレア政権が2000年に法律を制定、政党本部に対し1個人・団体あたり約70万円以上(上限なし)の献金に情報開示が義務付けられるようになるまで、質的にも量的にも一切規制はなかった」という。

 「規制が緩いわりにスキャンダルが少なかった理由」として、「制度上の違いがある」。
 「英国では政治資金制度は、選挙での支出制限が目的」で、「人物ではなく政党本位で選ぶ伝統があり、『金をかけない選挙』を実現した結果、醜聞も少なかった」という。 
 「ドイツの場合、政治献金そのものを規制しないかわりに、国庫補助(政党助成金)の配分を工夫したり、個人献金や党費に税制上の優遇措置を設けることで、結果的に巨額団体献金を抑制している。ロビー活動にしてもNGOの力が強く、全体として政治と経済のバランスがとれてきた」という。

 そんなEUも「全体で1万500人のロビイストが活躍する時代、企業の政治活動の透明化を求める声は高まっている」という。「英国も07年に労働党の巨額献金疑惑が発覚、献金の上限を定めるなど法改正に向けた試行錯誤が続いている」という。

財界「「ロビー活動は企業の権利」だからこそ献金の透明化と”表の議論”が大切だ」

 日本では政治献金が最近話題になっている。米国でも政治献金問題は度々問題になっているが、米国の仕組みはどうなっているのだろうか。
 「米国でも、企業が直接政治家に献金することは禁止されており、さらに個人献金についても200ドル以上は所属企業や団体を明らかにすることが義務付けられている」。さらに、「選挙資金であれば、候補者の事務所は、献金と経費を細かく記載したレポートを四半期ごとに連邦選挙管理委員会に提出しなければならない」。
 こういった仕組みに加えて、「これらは公開情報に指定されているので、複数のシンクタンクがサイトで誰もがアクセスできるデータベースを作っている」という。
 このように、クリーンさを確認できるような、(完璧ではないが)問題を防止するような仕組みをとっている。

 この仕組みが簡単にここまで構築されたわけではない。

 「第2次世界大戦終結後の1946年には、包括的なロビー活動に関する法律が制定された。その後も修正を重ね続け、、1995年にはロビー活動をするには上院と下院が運営するサイトに登録することが義務付けられ、収支報告の提出、遵守しなかった場合の罰則も強化された。政治資金の規制についても、1972年、ニクソン大統領を辞任に追い込むことになったウォーターゲート事件、2001年のエンロン事件など、事あるごとに法改正を重ねている」。

 一方、「日本では、企業と政治に絡むこと自体に『汚い』というイメージがあるだけに、多くの企業は渉外部門を持ちながら、表立って動いていない」のが現状だという。
 「政治との関係強化のためのパーティや勉強会には貢献しているようだが、公に、政策についての高度な知識・情報をアウトプットすることは控えている」という。
 これに関して、日本では汚職に結びつきやすい構造・性格が強いのだろうか。

 「日本の伝統的な形としては、大企業は経団連を通して活動をしてきた」。その経団連であるが、「数年前から企業の声を政治に届けようと政治献金を増加させる動きを見せている」のだが、「経団連の場合、必要な政策が何かをまとめることができないほど参加企業が多い」ために、「献金の目的が曖昧」になるという。
 日本にはまだまだ課題が山積みな状況である。

 それでは、ロビイストというのはどのようにあるべきなのか。
 「政治にとっても、企業が健全に成長し雇用が安定することは最重要事項」である。「企業はその分野の専門家」であり、「米国では、政治家はジェネラリストであるからこそ、様々な立場の人からの情報・分析を聴くことは当然とされている」という。
 そして、「企業が利益を追求し、それを政治に伝えることも、国の利益につながると認識されている」のだそうだ。
 そして、企業は「ロビイストを雇い自社開発の仕様が標準になるように働きかける」。

 ただし、「ロビー活動は、一歩間違えると腐敗につながる」。
 もはや、「政治家、官僚、マスメディア、シンクタンクに続くパワーとして」ロビイストは見過ごせない存在になっている。「専門職としてロビイストという職種もロビー会社も存在する」。
 そのため、「公正な活動となるよう様々なルール」があり、「活動内容を定める法律」も存在している。

 それに、ロビイストと政治家との関係がうまく機能すればメリットは大きい。
 「政治家はロビー活動から企業が持つ情報を知り、同時にその分野の専門家の意見を聞く」。そして、「多種多様な情報を分析して、米国にとって最良と思われる決定を下す」わけだ。その「ロビー活動は、まさしく企業間の競争である」。
 そのため、「企業側も、議会の法案の行方を注視」することになる。
 このように法案の内容を知り、互いに分析することで活発なやり取りになり、それらの決定は良質なものになっていく。

 ただし、そのためには「政治家、企業、消費者それぞれの立場からの情報集積が必要」である。
 そうしたことがクリアされていけば、情報の扱いが高度になって洗練されていく。
 そして、「様々な立場のロビー活動は、政治家の判断基準として不可欠な要素」となっている。

 何も米国の仕組みが完璧だとはいえない。もちろん、米国にも欠点がある。
 「透明化の網を潜り抜けるため、日本以上に複雑な陰の仕組みが構築されていることもある」という。だが、「企業献金の禁止という『絶対善』の提案で議論を中断しても、問題は解決しない」。
 「政治献金やロビー活動を『悪』として思考を停止するのではなく、欠点も認識した上で、公正な企業の政治参加を可能にする制度作りが求められる」だろう。

メディア「検察と組んで政界疑獄を演出する大新聞・テレビの「権力意識」」
本誌編集部

 メディアに大きく影響を与える政権。この問題は実に深い。
 なぜなら、「政権交代が起これば官僚機構」も大きく変わるため、「そこに依存するメディアの在り方」も変わってくる。そのため、「それを歓迎しない記者は多い」という。
 つまり、「日本のメディアは政治の変革を敬遠する傾向がある」というのだ。

 NHKは「特殊法人」である。そのため、「予算の国会承認が必要である」ため、「政府・与党との関係が経営に直結」してくる。そのせいもあり、「安倍晋三・元首相が関わった『番組改竄疑惑』など数々のスキャンダルを招いてきた」という。
 さらに、「NHKの経営を厳しく批判してきた民主党が政権を獲ること」にNHKは脅威を感じているかもしれない。
 民主党とNHKの関係は悪いようだ。

 「テレビ局には”記事を書かない記者”がいる」という。その記者は「放送免許を担当する総務省詰めということになっているが、仕事の実態はエリート官僚や族議員などへのロビイングで、彼らは”電波を取ってくる記者”という意味で『波取り記者』と呼ばれている」という。
 会社を経営する上でそういう役回りもいるのだろうが、果たしてジャーナリズムとなるとどうなのであろうか。

世界を読むための情報羅針盤 第95回
「小沢一郎秘書の逮捕・起訴は「国策捜査」ではなく官僚による「世直し」だからこそ危険なのだ」
佐藤 優

 「鈴木宗男事件は、公共工事によって富の再配分を行うという田中角栄型政治(日本型社会民主主義)との訣別という意味があった」という。「06年のライブドア事件は『稼ぐが勝ち』『カネで買えない物はない』との発言で有名になった当時ライブドア社の社長をつとめていた堀江貴文氏等同社幹部を摘発することで、行きすぎた新自由主義に歯止めをかけるという意味があった」という。

 そして「今回の大久保氏の事案」はどうであろうか。
 「政治資金規正法違反という旧来型事案で国家政策を転換するという象徴性はない」という。それではいったい何が起こっているのだろうか。
 それは「特捜検察は本気になって『世直し』をしようとしている」のではという。「現下の日本は危機的状況」にあるが、「政治家も経済人も利己的で腐敗している」。そうした中、「西松建設の政治献金を調べているうちに、特捜としては看過できない事案が、多くの政治家に絡んででてきた」。その中で、「小沢氏の事案が特捜には特別大きな獲物のように見えた」のではないかという。

 しかし、このことが本当であるならば、懸念すべき事柄が生じるという。
 「軍事官僚であれ、検察官僚であれ、資格試験に合格しただけで、国民による選挙の洗礼を直接受けない者が進める『世直し』は危険」であるというのだ。なぜなら、「思い込みが間違えていた場合、国民による軌道修正ができないから」である。「民主主義の観点から特捜検察の動きを厳しく監視する必要がある」だろう。

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