アメリカ経済の行方(From SAPIO 2009.4.8)

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世界を読むための情報羅針盤 第94回
「米露外相会談の「あり得ないロシア語ミス」が示す”冷えた両国関係”」
佐藤優

 「ロシアは大変なタフネゴシエーターだ」という。「約束をしても『約束を守るとは約束しなかった』と言って凄んだり」して、「無理難題を吹っかけてくることがある」という。
 「天然ガス・石油開発利権のシェアをロシアがより多く得ることが本音でも、それを直接口に出さないのがロシア式交渉術で、事態を変えるために環境という変化球を投げて」くる。
 ロシア人は自分が味方と思う国にはこういうネチネチした交渉はしない」という。「『オレたちの分け前をもっと寄こせ』と端的に交渉する」というのだ。
 このことは、ロシア(人)の性格が出ているのだろう。これを理解することはロシアを理解することの土台となる。

 米露関係はなかなかよくならない。冷戦時代から米露の競争が続いている。そんな米露関係であるが、ロシアではこういった内情があるようだ。
 「ロシアでは米国共和党に対する信頼感が強い」という。「民主党と比較して共和党が『力の外交』の信奉者で、ソ連時代を含め対露強硬論をとっている」という。

 その理由に、「ロシアが南オセチアとアブハジアの『独立』を一方的に承認し、グルジアの領土保全を破壊したことに対し、米国は口先では避難したが、現状を容認した」。これは、つまり「『力の論理』の信奉者であるが故に共和党は『棲み分け』を重視する」という。「『力の論理』の信奉者であるロシアも、このような共和党の現実主義外交を好む」のだ。
 一方の「米国民主党は、自国と見解が異なる国との関係においても対話を重視する」という考え方であるが、「自由や民主主義という基本的価値観をめぐる問題については、妥協しないところがある」という。「従って、米国に民主党政権が生まれると、最初は米露(ソ)関係が改善するという希望が生まれるが、しばらくたつと米国の人権干渉に対してロシアが忌避反応を示すようになる」というのだ。
 このようなことから、「オバマ民主党政権の対露外交もこのパターンを繰り返す」のではないかという。
 米国の共和党、民主党、ロシアの考え方を比較することは重要であるだろう。

 さらに、不安な要素がある。「外交官の基礎は語学力」である。「米国国務省のロシア専門家のロシア語能力に不安」があり、パフォーマンスをする場合、「米国国務省の担当者が、ロシア外務省の友人をもっているならば、『これで大丈夫か』と意見を求めることをする」。
 今回、ロシア語の表記でミスがあった件から、「米露間の事務(官僚)レベルでの信頼関係が十分構築されていない」ことがあげられる。「こういう状況で難しい交渉をまとめあげることはなかなかできない」のが現実なところだ。
 米外交官の能力(基礎)が低下し、さらに米露の信頼も十分に構築されていない。これからの米露関係を注視する必要があり、暗い見通しである。

新世界大戦の時代
「アメリカ経済はふたたび「怒りの葡萄」の季節を迎える」
落合信彦

 「『100年に一度』の経済の悪化は、1929年10月24日の『ブラック・サーズデイ』(暗黒の木曜日)が引き金となった世界大恐慌と比較されることが多い」が、この時代環境と現在ではどうだろうか。
 今回の世界的な金融危機における不況は深刻な状況である。
 よく過去と比較されるのだが、「1929年10月24日から大恐慌が始まったわけではない」。「不況(recession)が恐慌(depression)に進化し、さらに世界に波及して大恐慌(the Great Depression)へと発展」。「その「到達点は、1933年の中頃と言われる」という。
 「つまり、最悪の状態になるまでに4年近くの歳月を要している」ということだ。
 「今回の金融危機は、昨年の9月15日が発端とすればまだ半年」しかたっていない。「株価がピークを迎え、サブプライム危機で下がり始めた07年10月を起点としても、まだ1年半しか経っていない。また大恐慌時代の失業者率は25%近くあったが、現在のアメリカは8.1%である」。
 要するに、

「まだまだ底など見える段階ではない」ということだ。不況の底が見えていないことがいえるかもしれないが、時代環境が違うということを考慮に入れ、過去との比較・分析をする必要があるだろう。

 フーバー政権時の対応を見ると、「フーバーは2万品目もの輸入品に対して、関税率をそれまでの平均約25%から2倍近くに引き上げた」。これに対し、「貿易相手国も報復措置としてアメリカの商品に高い関税をかけ、アメリカの輸出入は半分以下に減少し、世界の貿易は滞り、世界恐慌に拍車」がかかってしまった。
 「結局、フーバーは有効な対策を何も打てないまま、大統領選挙でフランクリン・ルーズベルトに大敗を喫し、4年の任期を終えた」という。
 このように、「この不況下での保護貿易主義は、自由貿易体制に悪影響を及ぼし、結果的に世界不況を加速させてしまう」ということが、「フーバー大統領が証明している」。

 「世界経済は今年、戦後初めてマイナス成長に転じる」という。そして、「世界の貿易量の減少も過去80年で最大になる見通し」であるというから、先行きは暗い。

 解決策はあるのだろうか。考えたくはないが、「残された道は戦争しかない」のだろうか。しかし、「その道はすでに閉ざされている」という。
 まず、アフガニスタン。「アフガンでは『戦争特需』は発生し得ない」。なぜなら、「局地戦が重要になる対テロ戦争時代においては、大型兵器を大量投入するという局面は皆無に等しく、アメリカ全体の景気を刺激できるほどの需要は期待できない」からである。

 それに、こういった最悪のシナリオも考えられるという。
 「対テロ戦争は景気刺激にならずとも、軍需産業にとっては大きな即得権益である。イラク戦争で利権を握っている軍産複合体が、イラク戦争を推し進めるオバマに凶弾を浴びせるという」シナリオだ。
 それだけ、軍産複合体の利権、力は大きなものであるのだろう。

 イラク問題はまだ深刻な状況で、「イラク撤退は、いまだ脆弱な治安状況を考えるとかなりリスクが高い」とみられる。

日本人が本来持っていた「低く暮らし、高く思う」という哲学」
富岡幸一郎(文芸評論家)

 「清貧とはたんなる貧乏ではない」。どういうことか。
 「それは人間のひとつの思想であり、意志によって積極的につくり出された『生き方』である」ということだそうだ。つまり、「文化」だという。

 「グローバル化した金融資本主義の失敗は、市場の失敗ではなく、それをうまく機能させることができなかった人間の失敗である」という。
 「グリード(強欲)な金融資本主義を生み出したのは、市場のシステムの欠陥ではなく、物質文明の中で、ただよい続ける人間そのものの強欲によるものである」という。
 完璧なシステムはないし、人間の問題もあるだろう。しかし、システムが人間を作り出すことはないのだろうか。

「貧しくとも心が満ち足りていれば豊かと言うべし―」
中野孝次(作家)

 光悦はある茶入れに惹かれました。
 その茶入れの「値段を聞くと、金30両という大変な額」。「それでも欲しいと思ってお金を工面した」そうだが、「どうしてもできない」。
 それを見かねて「『まかけ進ぜよう』と申し出るのですが、光悦は『この茶入れは天下の宝で、黄金30枚の値は必ずあるから、それをまけてもうらうわけにはいかぬ』と断った」という。そして、「光悦は、住まいを10両で売り払い、20両を借金して、茶入れを手に入れた」そうだ。
 このことに対し、「光悦は嘲笑されましたが、徳川家康だけが褒め称えた」という。
 物の価値と心の価値がわかるということだろう。

<参考記事>
・「新しい経済システムを提案したら?」/ちょっとだけ、でしゃばりトーク

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コメント

  1. hikaku より:

    サイト運営し始めた者なんですが、相互リンクしていただきたくて、コメントさせていただきました。
    http://hikaku-lin.com/link/register.html
    こちらより、相互リンクしていただけると嬉しいです。
    まだまだ、未熟なサイトですが、少しずつコンテンツを充実させていきたいと思ってます。
    突然、失礼しました。
    07Ag0DZ0

  2. 谷口 永治 より:

    >hikakuさん
     こんにちは。相互リンクの件ですが、あなたのサイトはどういった内容なのでしょうか?

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