核の脅威の抑止力(From Newsweek 2009.3.25)

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「タリバンを抱き込む6ヵ条」
ラジャン・メノン(米リーハイ大学教授)

 アフガニスタンの「駐留米軍の規模は今年末までに6万人になる」という。
 しかし、これを現実的に当てはめるとしても、「アフガニスタン国軍と国際治安支援部隊(ISAF)の力を借りるとしても、65万平方キロに及ぶ国土をカバーすることは到底できない」のでは。
 面積がアフガニスタンの3分の2のイラクでも、ピーク時の米軍の規模は14万人」であったことを考えると、アフガン安定は厳しい状況で、米軍一人一人の負担も大すぎで、負の逆に不安定にならないだろうか。

「核の脅威を止める21世紀の抑止力」
グレアム・アリソン(ハーバード大学教授)

 「アメリカとソ連が対峙した冷戦下では報復攻撃の恐怖が核ミサイルの発射」を防止していた。まさに、緊張感のある平和であった。「相互確証破壊と呼ばれるこの均衡によって何十年間も平和は維持」されていたが、この均衡の成立には核ミサイルの出所がはっきりしてい」ためである。
 ただ、現在では超大国アメリカの一極支配における平和になっている。しかし、その平和も崩れてきている。

 その一つの要因が核問題である。核を持とうとする国やテロリストの問題が深刻になっている。
 「02年、全米調査評議会は9・11テロをきっかけに始めた研究で「核兵器使用後の属性鑑定の技術は現存するが、うまく統合する必要があり、それには数年かかる」」とした。
 さらに、「アメリカ科学振興協会(AAAS)は08年、核鑑識の実現には解決すべき問題が多く、特に核兵器が使用された際にすぐアクセスできる世界規模の核物質データベースがないと報告した。AAASによると、米エネルギー省にはウラン化合物のデータベースがあり、他の米政府機関や諸外国も相当量のデータベースを持っているが、「情報を統合して核鑑識に使用できるデータベースはない」という。
 「そうした統合データベースが存在しても、核兵器が使用された際に各国がそれを利用する態勢がまだ整っていない。AAASの報告書が指摘するとおり、政策決定者たちに迅速に正確な情報を提供するための装置や人材が今は不足している」のが現状だという。
 ただ、協力態勢を構築する段階で、万が一、悪用する者があらわれた場合、どう防止するのか。この態勢はいいシステムであろうが。
 ちなみに、「北朝鮮は以前は核不拡散防止条約の加盟国で、国際原子力機関(IAEA)の査察対象だったので、IAEAが膨大な比較サンプルを持っている」という。

 これらの問題を解決するための要件の一つとして、

「北朝鮮やパキスタンで製造される核兵器がテロリストの手に渡る懸念が高まる今、核抑止策を練り直す必要がある。自国の核兵器に対する責任は核保有国の指導者にあることをはっきりさせ、彼らがテロリストに核兵器を売らないよう抑止すること」や「彼らが核兵器・核物質をしっかり管理したくなるような奨励策を考案することも重要」なことである。
 さらに、「核物質の出所を信頼性のある方法で特定するだけでは十分な核テロ防止策にはならない。核に関する説明責任について共通のルールを確立する必要がある」。
 こういった共通ルールは明確にしておくことは重要である。

 具体的にしたのが、「「核テロ防止世界同盟」を樹立すべき」ということである。この組織の使命は核兵器や核物質がテロリストの手に渡らないよう、物理的・技術的・外交的に可能なあらゆる行動を取り、核テロのリスクを最小限に抑えること」である。
 「同盟への加盟には核兵器・核物質のセキュリティー管理を確実に行うことが条件となり、その手段は透明性が高く、他の加盟国を安心させられるものでなければならない」。
 「加えて、テロリストの手に渡った核兵器・核物質の出所を特定できるよう、加盟国は自国の核物質のサンプルを世界規模のデータベースに提出する義務を負う。万一、核兵器・核物質が盗まれても、その国がセキュリティー管理に関する要件を満たし、十分な「防護壁」を講じていた場合はあまり厳しい処分を受けずにすむ」というものになっている。
 「加盟を渋る国は、テロリストに核爆弾を提供する可能性のある国のリストに自動的に加えられることになる。加盟国でも、核物質がテロリストの手に渡ると知りながらそれを許したことがわかれば、賠償請求や武力制裁など厳しい罰を受けることになる」。
 この組織案は完全ではないかもしれないが、検討すべきであろう。ただし、この組織の位置づけや管理が難しいものである。一定の国が管理するとなれば、一定の国の支配になってしまう可能性があるからである。

 さて、この案が成立するのは、核鑑識の技術が必要である。その技術は可能なのだろうか。
 その答えは、「闇市場で売買されるプルトニウムの製造元を特定するのは困難」であるが「不可能ではない」。「科学者がその手法を確立しつつある」という。
 「核鑑識を行う際は被爆地の瓦礫や闇市場に出回る核燃料を分析し、核物質の経路を製造元まで追跡する。それは指紋から犯罪者を特定する作業に似ている。犯罪者の指紋を採取してデータベース化できるようになったのは20世紀になってから」だそうだ。「核鑑識にも比較対象となるデータベースが必要」である。
 「現在、核兵器の原料となる物質は少なくとも40ヵ国が保有している。専門家は今、これら製造元のデータを集める作業を進めている。核爆弾の原料となるウランとプルトニウムに関しては、鉱石を採掘して、濃縮し、使用済み核燃料を再利用するまで、全ての過程で核物質がどこから来たかという痕跡が残る」からである。
 「ウラン鉱石はウランの他にアメリシウムやポロニウムといった物質で構成されている。これらの物質はそれぞれ異なった特徴を持」ち、「プルトニウムの同位体の構成も製造された原子炉によって違う」。
 「核兵器の爆発後、核鑑識の担当者は瓦礫を集めて分析施設の送る。不純物や汚染物質も含めた物質固有の特徴を見つけ出し、製造元を突き止める」るわけである。
 さらに、「核爆発を分析すれば、核兵器の設計法を知る手がかりもつかめる」。
 これが、確立されれば、一つの抑止効果になりうる。

 こうしたことから、核の脅威に対する抑止力策が出てきた。
 「仮にニューヨークが核攻撃を受けた場合、核燃料が製造されたのが寧辺の原子炉と特定できれば、新しい有効な核抑止策となる。場合によってはウラン鉱石を採掘した鉱山まで特定することも必要」になり、「こうした「核鑑識」の概念の背景には、北朝鮮の政府高官に核拡散の代償が高くつくことをはっきり伝える狙い」もある。

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