化学兵器廃棄問題

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 シリアの化学兵器問題で世界が揺れている。シリアの内戦で化学兵器が使われたことをきっかけに、アメリカやイギリス、フランスはシリアへの武力行使に進む方向になった。しかし、イギリスは議会での武力攻撃の否決が決まり、武力行使はしないことに。アメリカも世論や議会の反発が大きく、武力行使は厳しい状況になった。そこに、ロシアが仲介案を提案し、その案を進めることになった。その仲介案は、化学兵器を廃棄するという内容で現在、その化学兵器の査察や廃棄への条件の履行に向けて動いている。

 仲介案の条件である「化学兵器をいつまでに廃棄するか」という点について、化学兵器の廃棄作業は、かなり難航する見通しだった。しかし、シリアの化学兵器約1,000トンの全量は弾薬などに充填されておらず、毒ガスを作る工程の前段階の安定した液体「前駆物質」で保管されていることがわかり、廃棄作業は従来考えられていた作業より比較的容易だという。ただ、この「前駆物質」も化学兵器禁止条約で「兵器」とされている。
 シリアの化学兵器作業は、タンクに保管されている前駆物質を中和する作業(混ぜれば危険な化学物質の危険度を下げる)が廃棄の中心となり、燃焼施設の建設や移動式施設などは不要となり、処理は早まるとみられる。
 しかし、シリアは深刻な内戦状態なため、査察官・処理する人の身の安全、支援する多国籍軍の派遣などの国際協力が必要になってくる。

 シリアの化学兵器問題が大きな話題になったが、化学兵器の廃棄作業自体は困難である。
 1997年発効し、189カ国が加盟している化学兵器禁止条約。同条約により2007年までの10年以内の廃棄が定められており、1回だけ2012年までの5年間の延長が認められていた。
 しかし、アメリカとロシア、リビアは、2012年4月29日の最終期限を守ることが出来ず、加盟41カ国で構成する執行理事会が「可能な限り早期に」廃棄を完了することを了承し、3カ国の廃棄作業期限が延長されている。

兵器の廃棄の困難さ

 化学兵器の処理で最も難しいとされるのは、弾薬に毒性の高い化学物質が充填されるケースで、密閉した施設で化学物質を抽出し、高温で燃焼させる処理だ。アメリカもロシアもこのケースに該当する。さらに、廃棄期限が守れない背景には、化学兵器の量が大量であること、廃棄処理の整備が足りないことがあげられる。
 アメリカは2,000トンを超える兵器を保持し、2施設が2015年と2020年に作業を始める予定だとされるが、大幅に遅れているという。ロシアは1万トンを超え、昨年に新しく1施設を稼動、もう一つが2014年に稼動予定だとされる。

 「化学兵器をどうするか」という問題はシリアだけではなく、全世界の問題である。攻撃能力が高い兵器は、多くの被害をもたらす。それは、使うだけではなく、使用期限が過ぎれば、廃棄という作業が待っている。
 そうした兵器を廃棄するにも慎重な作業が必要で、すぐ廃棄できるといった簡単なものではない。今回の化学兵器廃棄も、いくつかの廃棄処理に慎重な作業が必要となる。万が一、ミスやトラブルが発生すれば、それは爆発や化学物質汚染につながってしまう。
 廃棄作業問題は、化学兵器だけではなく、様々な分野にも関わってくるため、様々な分野の生産・作成というつくる場面だけではなく、それらの処理・後始末をも考慮に入れた対策や整備を網羅した体制を整えないといけない。
 そして、そうした点と、そのモノがある背景や原因自体を考えた取り組み、体制づくりも考えないといけないだろう。

【参考資料】

・「化学兵器 米露、廃棄期限守らず 対シリア「早期」要求と矛盾 「作業が膨大」理由に」
(毎日新聞 2013年9月14日(土))
・「内戦下の廃棄可能性に疑問も」
(毎日新聞 2013年9月15日(日)
・「シリア化学兵器 廃棄容易 全量 毒ガス前の物質 来年前半完了可能」
(毎日新聞 2013年10月10日(木))

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