平和はいつ訪れる(下)

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 ところが、社会の数が増えるにつれて戦争の起きやすい状況が形作られていった。
 戦争が行われるようになった背景にはいくつかの事情がある。人口増加や食糧不足、文化によって切り分けられた集団の形成などだ。まず『私たち』と『彼ら』を区別する文化的基盤ができ、その後で(外部環境から生じた問題に対処するため)襲撃、殺害、放火などの行為が取られるようになる。
 6000年前のメソポタミアやエジプトは戦いに明け暮れていた。大軍が組織され、馬に引かせる戦車や投石用兵器などが開発された。だが国家が形成されたことで、紛争解決のための法律や制度が発展し、それに伴い、繰り返されていた戦いが減っていった。
 より最近になって国家間の戦争や社会における暴力行為が減った要因は数多くある。例えば民主主義が広まったことだ。過去2世紀、民主国家が互いに争うことはめったになかった。
 第二次大戦が終わったときには民主国家は20しかなかったが、その数は今や4倍である。エール大学のブルース・ラセット教授(政治学)は、国連やEU(欧州連合)などの国際機関も経済的な相互依存を促進することで『民主的な平和』を生み出すのに貢献していると主張する。
 女性の権利拡大も平和の維持に役立っているようだ。女性が教育を受ける機会が増え、経済的に自立した女性が多くなるにつれ、出生率は低下する。人口が減れば、政府の負担が軽くなり、資源の消費量も減少するので、社会の不安定要因が減っていく。
 過去1世紀で人間の平均寿命は約2倍になった。長生きする人が増えれば、戦争などで死にたくないと思う人も増えるものだ。
 グローバル化とコミュニケーション手段の発達によって国家間の相互依存関係が深まったことも、戦争や暴力行為の減少を促したと考えられている。

 現在、武力紛争に脅かされている国・地域はアフガニスタン、イラク、パレスチナ、スーダン、ブルンジ、ソマリア、コロンビアなど10以上に上る。
 世界には自動小銃のカラシニコフから核ミサイルまで、あらゆる種類の兵器があふれており、核保有を表明している8ヵ国の核弾頭数の合計は2万3,000発を上回る。

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 戦争はなくならないのか。そんなシンプルな問いの答えはなかなか難しい。
 戦争を行う手段は日々、進化している。進化を遂げている側が強くなるが、同時に社会も日々、進化している。争い事はあるが、それを防止するための法律などができ、そこに民主主義が一躍かってもいる。
 だからといって、安心とはいかない。難しいのは、犯罪と犯罪の取り締まりの関係は続くということだ。つまり、争いの攻撃と防止の関係でいうと、新しい犯罪が行われ、それを対応。しかし、さらに新手の犯罪というサイクルがあるためだ。
 戦争という一視点だけではなく、戦争という問題の本質に対する多様的な視点で考える必要がありそうだ。

(終わり)

【参考資料】

・「「戦争の世紀」は終わった」
(Newsweek 2009.12.30/2010.1.6)

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