環境問題は世界に影響する

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 中国は太陽光エネルギーといった再生可能エネルギーへの取り組みに力を入れている。しかし、その背景には、国内の環境問題の深刻さが伺える。
 中国は現在、経済発展により世界で大きな存在感を与えるようになった。その存在感を高めることを戦略に入れつつ、さらなる発展を模索している。
 そのため、経済を向上させることは必須項目で、同時に軍事力向上などにも力を入れており、世界の中での中国の立場をさらに高めようとしている。

 問題は、その行動を重視するあまり、環境問題をさらに深刻にさせていることだ。
・中国における5億6,000万の都市生活者の中で、EU(欧州連合)の基準で安全とされる大気環境で生活できているのはわずか1%に過ぎない
・今後、石炭火力発電所の建設が加速していくが、石炭洗浄インフラが十分ではないことが問題となっている。工場での硫黄酸化物や窒素酸化物などの除去装置がないことなど、大気汚染問題を深刻にしている
・自動車の需要が増えて、自動車の排気ガスなどによる大気汚染問題を加速。2030年までに4倍以上の台数に達するとされ、それだけ大気汚染問題が進む可能性が高い
など、問題となっている項目をいくつか挙げた。もちろん、これらの問題だけではない。
 汚染が原因で派生する疾病が急増しており、胃がんなどの疾患が増えているという。国内の水路の70%が汚染されているとみられ、汚染物質は既に地表の下に入り込み、監視対象とされている井戸の半分以上が飲用に適さないとみなされているという。さらに、中国の都市の90%が汚染された地下水に依存しているとされ、施設で浄化された水も、家庭に供給されるまでに再び汚染されることが多いそうだ。そして、大規模な給水用の地下トンネルによる地盤沈下も問題になっているところもある。

 ディーゼルトラックが排出する硫黄酸化物の問題は、アメリカと比べて23倍も高い。排気ガスの問題は深刻な影響となっている。
 排ガス(及びその他の大気汚染)は酸性雨を発生させ、中国の耕作地の3分の1にダメージを与えるという。しかも、それだけではない。朝鮮半島や日本、アメリカにも影響を与え、森林や河川に悪影響を与える原因にもなっている。
 さらに、中国から飛来するブラックカーボンの煤煙(スス)は、環太平洋地域全域で太陽光を遮り、農作物の収穫量を低下させ、大気温度を上昇させ、気候を不安定化させている。

 廃棄物処理問題も深刻で、世界最大の漁場の一つである東シナ海の80%が漁業に適さない海域とみなされているという。なぜなら、中国の沿海都市部の多くの工場が廃棄物のほぼ半分を直接に海へと流し、これによる魚群の規模が激減する結果を招いているそうだ。

汚染の影響は周辺に広がり、水問題紛争も拡大

 アジアにおける一人当たりの水資源は、世界平均の半分のレベルしかないという。中国とインドには世界の人口の40%が集中しているが、両国に存在する水資源は10%程度しかない。今後、その需要と供給問題でさらなる争いが発生する可能性が高い。そこに、汚染問題がさらに後押しする。
 実際、中国は水汚染を拡大させている。しかも、主要河川にダムをつくり、世界における5万の巨大ダムのうち、半分以上が中国に存在するに至っているそうだ。これは、中国が周辺13カ国への河川水資源の供給を左右できる立場にたったということもいえる。その結果、水を求めた周辺国との衝突も増加。中国は水問題のルールをつくるのも拒否している。

 ただし、問題は中国の環境への行動が経済発展に必ずしもつながるとはいえないということだ。
 中国国内の環境対策を疎かにすれば、それだけ中国国内での環境問題も深刻になり、国民の体調へも大きく影響する。国民の体調に影響するということは、元気に働くことができなくなるため、経済発展にも大きく影響していく。
 さらには、周辺国にも影響し、トラブルに発展する。そして、周辺国も環境汚染という問題に直面することから、世界の環境問題に発展していく。これが悪循環にはまれば、世界での元気な人々が減少していくことになり、世界的な衰退が現実になってしまう。
 資源はこれまでもこれからも、世界の中で重要な位置を占め、そして、それを確保しようとする動きは活発になっていくだろう。しかし、それに伴う問題も疎かにすれば、資源という重要な影響力に匹敵するほどの弊害となるだろう。環境対策を怠ることは、自国にも世界にも影響を与えることになる。

参考資料

「世界に汚染を拡散する中国の環境破壊――中国による大気・海洋汚染の実態」
(FOREIGN AFFAIRS REPORT 2013 NO.5)
・「水問題 東南アで深刻 アジア・太平洋水サミット タイなど 洪水一転、渇水懸念 治水、官民で協議 日本の技術アピール 防災や下水処理システム」
(日本経済新聞 2013年5月15日(水))

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)