どこまで進む? 通常兵器のルール化

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 国際的な戦争や紛争などを抑制するために、国際的なルールがつくられてきた。代表的なものは、一度の使用で壊滅的被害をもたらす大量破壊兵器だ。核軍縮の観点から核保有5カ国(米露英米中)以外の核兵器保有を禁じる核拡散防止条約(NPT)、開発・生産・貯蔵などを禁じる生物兵器禁止条約や化学兵器禁止条約といったものがある。
 しかし、通常兵器が流出・流入し、紛争問題につながっている問題に対して、明確なルールはなかった。
 1991年には「国連軍備登録制度」が採択されたが、大型兵器(戦車、戦闘機など7種類)を対象に輸出入の報告を奨励するもので義務ではなかった。さらに、小型武器(拳銃、機関銃など)については、非合法取引の防止を目指した「国連小型武器行動計画」が2001年に採択されたが、政治的合意に過ぎなかった。

 しかし、新たな動きとして4月2日、「武器貿易条約」(ATT)が国連総会で採択された。この条約は、通常兵器の移転の可否を判断する際の明確な基準を決め、世界共通のルールにしようというのが目的で、無責任な武器移転を阻止するものを目指している。つまり、通常兵器の非合法市場への流出を防ぎ、戦争犯罪やテロ行為など非人道的な行為を予防するというもので、武器管理に関する既存の枠組みを結集させる狙いもある。この条約により、通常兵器の国際的な取引に、世界共通の法的拘束力を持つ規制が初めて導入されることになる。

 そのATTの対象範囲は、戦車・ミサイル・戦闘機・火砲・攻撃用ヘリ・軍用艦・装甲戦闘車両の「通常兵器」と、人が携行できる小銃など「小型兵器」の合計7項目。
 これらの対象範囲について、国連安全保障理事会決議に基づく禁輸措置違反や、大量虐殺や「人道に対する罪」、民間人の直接攻撃に使われると分かっている場合は、最も厳格に規制され、輸出だけでなく、通過、積み替え、仲介といった「あらゆる移転」が禁止となる。
 その他に、
・国際人道法や国際人権法の重大違反、テロや国際組織犯罪に関連する協定違反につながる危険性がある場合、輸出を許可しないことを義務化
・武器の非合法市場への流出防止措置をとることを義務化
・弾薬の移転は、一定の規制を受ける(ものの、流出防止の対象外)
といった内容だ。

ATTが効力を発揮するには?

 ただし、これで終わりではない。条約への正式参加には各国の議会などによる批准が必要で、この条約を批准した国が50カ国に達してから90日後になってから発効する。つまり、50カ国が批准して90日たたないと、この条約は効力を発揮しない。
 さらに懸念事項なのはアメリカの動向だ。国内に強硬な武器規制反対派を抱える世界最大の武器輸出国であるアメリカが批准するかどうか、が他の国の動向に影響するからだ。アメリカ国内では、上院(定数100)で67人の賛成が必要だが、与党・民主党は55議席(無所属2人を含む)となっているため、簡単にはいかないかもしれない。さらに、もしアメリカが批准しなければ、ロシアや中国などが消極的になる可能性が高い。
 問題は、これの意味していることが大きいということだ。通常兵器の貿易額を見ると、2008~2012年の武器輸出額はアメリカが30%、ロシアが26%、中国が5%と、世界の武器取引の6割以上を占めている。つまり、アメリカ不参加により、ロシアや中国も続けば、それだけ条約の効果は薄れてしまうということだ。
 それに、この条約にはエジプトやインドなどからも反発がある。ちなみに、この条約は賛成154、反対3、棄権23という採択結果であり、イラン、北朝鮮、シリアが反対した。

 ATTは闇市場への流出防止や紛争の予防が期待されている。これまで、武器の流出・流入により紛争問題につながったケースは多い。シリアやレバノン、パレスチナ自治区ガザなど、これらに武器問題も深く関係している。
 この他に、国内の資源を売ったり、人質問題から金銭を獲得し、武器を得るといったことも多く、こうしたことから紛争問題にもつながっている。

 ノーベル平和賞受賞者のアリアス・コスタリカ前大統領が1990年代半ばに呼びかけたのがATT構想の始まりとされる。こうした武器流出・流入による紛争問題の対策の一つとして、ATTへとつながったわけだ。
 今後は、密輸による紛争地への武器供給などを効果的に規制できるかどうか、などといった課題が出てくるだろうが、まずは、一歩が踏み出せそうだ。

参考資料

・「通常兵器削減規制 壁高く 国連・武器貿易条約交渉 輸出入 双方に慎重論 法の網 大量破壊兵器のみ 通常兵器に包括条約なし」
(毎日新聞 2012年7月12日(木))
・「武器貿易条約 採択 国連総会 通常兵器に初規制」
(毎日新聞 2013年4月3日(水))
・「武器貿易条約を採択 通常兵器 国連、初の国際ルール」
(日本経済新聞 2013年4月3日(水))
・「武器貿易規制 実効性に課題 条約採択 賛成の米 批准は不確実」
(毎日新聞 2013年4月4日(木))
・「武器取引「野放し」 中東・アフリカなど紛争現場」
(毎日新聞 2013年4月6日(土))

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