欧州排出量取引制度が壁にぶち当たっている

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 環境問題は様々なところで存在しており、様々な環境問題が互いに近く、遠くのところで影響し合っている。地球温暖化もその一つで、現在も問題は続いている。
 地球温暖化問題を解決するために、様々な取り組みがされている中、特に二酸化炭素を出さないようにするといったことが注目されてきた。省エネ技術の追求や方法といったことが、環境問題を考える上で大きな要素になっていた。
 そうした中、2005年に欧州連合(EU)が、欧州排出量取引制度(ETS)をスタートさせたことは画期的だった。
 ETSとは、EU27カ国と周辺4カ国が参加する温室効果ガス削減のための制度で、国別割り当て計画に基づき、域内の一定規模以上の発電所や工場に排出量の上限を割り当てるもの。排出実績は毎年計測され、達成できなかった企業には罰金が科せられ、他社から余った枠(排出量)を購入して、排出実績とみなすこともできる。
 この制度を導入して、温室効果ガスを削減する動きにつなげ、地球温暖化を食い止めようというものだった。

 こうした取り組みは制度こそ違えど、アメリカでは州レベルで取り組まれ、日本でも取り組みは始まっている。ただ、日本では企業の自主的な目標という範囲を超えていない。
 国内の状況は、大企業による省エネ技術の提供で中小企業が排出量を削減した分を、大企業の削減量に参入できる「国内クレジット」(2008年から始まった)が主流となっている。その他、途上国で再生可能エネルギーなどのプロジェクトを進め、国連の審査を受けた上で削減量を日本分として計算できる「クリーン開発メカニズム(CDM)」が実施されている。今後は国連審査なしで排出枠をやりとりできる「2国間クレジット」を導入していく模様だ。
 ただ、ETSの制度のような、削減量を割り当て、未達成分を市場から買うという制度に産業界の反発が大きいとみられる。

削減できなければコスト増が、経済環境変化では……

 制度を通じて、二酸化炭素排出削減を促す狙いのETSだが、現在、大きな壁が立ちはだかっている。
・08年9月のリーマン・ショック後、企業の生産活動が停滞した結果、各企業の排出枠が大幅に余ったこと
・商社や金融機関が、需要増加を見越して開発途上国から排出量を取得するプロジェクトを多く手がけたこと
などにより、排出量1トンあたりの価格が暴落しているのだ。その影響は08年夏の1トンあたり約30ユーロから2月末の4ユーロ台(約7分の1)にまで落ち込んだ。
 これが何を意味しているかというと、排出量に「金銭的価値」を持たせることで、削減すれば儲かり、できなければコスト増となる仕組みを構築して、企業の省エネ努力を促すことが狙いだったETSだが、排出量の価格が下がり過ぎると、設備投資にお金をかけて二酸化炭素などを減らすよりも、市場から排出枠を買ってきた方が安くついてしまう。つまり、企業の省エネ努力を市場が阻害することになってしまうのだ。
 それでは、妥当な価格は、というと。専門家の試算では、企業の省エネ努力を促すには、1トン=50~100ユーロ程度の排出量価格が必要とされるが、05年のETS発足以来、価格は最高でも30ユーロ程度になっている。

 制度を通じて二酸化炭素排出削減を促す取り組みとして注目されたETSが、経済環境によりその動向が影響し、大きな変化になれば大きく反転してしまう状況になってしまう。
 ただ、ETSのその発想は重要で、こうした取り組みによる環境問題への意識は高まったのは事実だろう。制度の抜け道をなくし、制度の完成度を高めていくことが今後の課題となるのではないか。
 自主目標で環境問題を解決できればそれに越したことはない。しかし、こうした制度ができるということは、それだけ環境問題が深刻になっているということの証でもある。
 経済や政治など、これまでのやり方に、課題となる問題を意識づけることは、一つの解決の方法である。

【参考資料】

・「欧州の排出量価格暴落 温室効果ガス 企業の削減努力阻む 日本の財界 市場創設慎重」
(毎日新聞 2013年3月4日(月))

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