シェールガスは救世主か?

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 現在、エネルギーの土台を担っているのは、石油や石炭、原子力などだ。しかし、これらは二酸化炭素排出という地球温暖化問題に直結する廃棄物を多く出すことから、環境問題として問題視されている(原子力は二酸化炭素ではなく、放射性物質の問題がある)。そこで、最近では再生可能エネルギーという、太陽光や風力など自然の力を利用したエネルギー資源に注目が集まっている。
 だが、この再生可能エネルギーだが、電力などの動力源としては不安定さがある。電力を生産する上で、一定のエネルギーを供給しないといけないが、自然発生ということから、その供給が滞る場合もあるからだ。
 石油などの従来のエネルギー資源は現状ではまだまだ必要ではあるが、これら石油などのエネルギーに替わるエネルギーを探らないといけない時期にきている。

 そこで、今、エネルギー源として注目されているのが、「シェールガス」だ。
 シェールガスは、地下1kmから3kmの頁岩層に閉じ込められた天然ガスのこと。主成分がメタンなので、石油や石炭と比べて炭素排出量が少ないということから、現状の環境問題からも一つの希望となっている。このシェールガスへの動きが今、加速しており、アメリカや中国、インドなどで取り組みが始まっている。
 2008年にはアメリカがロシアを抜いて世界一の産出国になり、シェールガスへの動きが活発に。中国では、政府の試算によると、中国のシェールガスの推定埋蔵量は世界最大の21兆立方mから45兆立方m。2020年までに年800億立方mから1千億立方mの生産を目指すという。さらに、その後の開発も見据えた計画も進行中だ。
 ポーランドでは、シェールガス埋蔵量は推定5兆3千億立方mとされ、天然ガス需要の300年分に達するという。他にもウクライナやインドも、シェールガスへの動きが活発になっている。

シェールガスの懸念事項

 シェールガスは、環境にもこれまでの石油や石炭と比べて良いとされているため、注目株ではあるが懸念事項もいくつかある。
 「水圧破砕法」(ハイドロリック・フラクチャリング)という技術で、このシェールガスを採取することができるようになったのだが、この「水圧破砕法」に疑問の声がある。この技術は、頁岩層にパイプを挿入して化学物質を含む高圧水を吹き付け、岩がひび割れたところからガスを採取する方法である。この方法が環境汚染につながらないか、というのだ。
 これ問題視しているところも実際、出てきており、フランスやブルガリアでは環境破壊を理由に水圧破砕による掘削を禁じ、英国でもシェールガスは経済的に見合わないことや環境問題での懸念が出ている。
 さらに、アメリカでもニューヨーク州、ペンシルベニア州、ウェストバージニア州などで水源周辺など特定区域における水圧破砕法の使用を禁止または凍結する自治体が増加。テキサス州などは水圧破砕法で使用する化学物質の情報開示を義務づけた。

 この他に、いくつかの懸念事項があげられる。
 石油より炭素排出量は少ないというが、メタンが燃えれば二酸化炭素が発生し、メタンの地球温暖化係数(100年間の温室効果)は同じ量の二酸化炭素の21倍になるのでは、ということ。ガス井から漏れた化学物質とメタンが地下水に浸透。水道の蛇口にライターを近づけた瞬間、着火する、といった事例もあったという。地震が頻発したため、操業停止中の地域もあるそうだ。
 さらには、従来の天然ガスとシェールガスを比較したところ、シェールガスのメタン排出量が3割多く、一つのガス井から採取できる総量の8%が漏出していた、ということも。過去20年の天然ガスと石油・石炭の同エネルギー量あたりの温室効果の比較では、シェールガスは石炭の2倍との指摘もある。
 地中からシェールガスを採取するわけだが、採取することによる地表への影響はないのか、という声もある。
 メタンには地球を冷やす大気中のエアロゾル(塵)が凝集するのを妨げる働きもあるそうだ。

 と、ここまでシェールガスへの懸念事項をあげてきたわけだが、シェールガスがダメだとはいえない。つまり、こうした懸念事項をクリアすれば、エネルギー源として大きな魅力になるということだ。
 こうした懸念事項があるため、これらの懸念事項をクリアしなければ、本来の抱えていた問題がクリアできないということだ。環境問題をクリアするためにシェールガスを利用した結果、さらなら環境汚染につながってしまえば、元も子もない。
 確かに、エネルギー問題は重要な課題となっている。その一つの道として、シェールガスは魅力的だろう。シェールガスの安全な道を探ると同時に、他のエネルギー源の探求は続けていかなければならない。
 シェールガスには良い面も悪い面もあるだろう。単なる一視点だけではなく、様々な面を見て、悪い面を補い、クリアすることを考えなければ、すぐにまた同じ問題にぶち当たるだけだ。

【参考資料】

・「未来の足音が聞こえる 最相葉月が読むNew Scientist 第23回 メタンの大量発生で「シェールガス」は前途多難」
最相葉月(COURRiER Japon  2012.5)
・「シェールガス 中印も開発 米欧から採掘技術 新興国、エネ需要賄う」
多部田 俊輔(北京)(日本経済新聞 2012年1月31日(火))
・「環境汚染の懸念残る 米欧では規制強化の動き」
小川 義也(ニューヨーク)(日本経済新聞 2012年1月31日(火))

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