中東の危機 イランの核問題(5)

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 イランの核開発問題は依然として続いており、経済制裁、ホルムズ海峡封鎖など、一触触発の状態にある。
 今すぐにイランが核を持つことにはならないが、欧米諸国とIAEA(国際原子力機関)によれば、核兵器の製造には着実に近づいている。イランは、中部ナタンズにある1つ目のウラン濃縮施設で濃縮度約20%のウラン製造を大規模に進めており、09年に存在が明らかになった中部フォルドゥの第2のウラン濃縮施設でも最近、濃縮度約20%のウラン製造を始めたという。核兵器の製造には90%の濃縮が必要になってくるが、20%の濃縮に成功していれば、技術的にはいずれ90%濃縮も可能になる。ただし、兵器として用いるには、20%の濃縮ウランでも兵器化できるという声も。
 これまで、欧米諸国やIAEAからの追求に対して、イラン指導部は隠蔽と開示、協力と挑発を繰り返してきた。そして、今回、バラク・オバマ米大統領は2010年に圧力強化へと舵を切り、昨年12月、国際貿易と原油取引の要であるイラン中央銀行に対する経済制裁に踏み切った。これに対し、イランは世界の原油輸送の要衝であるホルムズ海峡を封鎖すると挑発し、ヨーロッパの一部の国への原油輸出を停止した。

イスラエルとアメリカの差異

 イランが核を持とうとする背景には、核を持つことにより、周辺国からの圧力の抑止力効果の他に、核の威力を背景にした自国の有利な状況を確保するということが挙げられる。しかし、敵対する関係にある国からは、それは脅威となり、特にイスラエルやサウジアラビアからは強い反発を受ける。そこで、イスラエルの動きが気になってくる。
 イスラエルは自国に脅威になることに対し、これまで軍事行動に出てきた過去を持つ。81年にイラクのオシラク原子炉、07年にはシリアの核施設を空爆して、核開発を阻止してきた。今回もイランへの空爆が行われるのではとされているが、今回は難しい環境にあるという。
 イランは攻撃される可能性のあるナタンズなどの核施設の防空体制をしっかりと整えており、重要施設は分散され、地下に造られている。ただし、イスラエルの動きが今、活発になっているのは、攻撃する判断は一刻の猶予がないためだともいう。
 つまり、イランが今後、空爆対策をさらに強硬にすれば、イスラエルの軍事技術での攻撃で阻止の可能性が低くなるという。そのため、アメリカの協力が今後、強く必要になってくるため、(ある意味の)単独の空爆は、今後は厳しくなってくるためだ。
 しかし、アメリカとしては、経済制裁といった形で圧力を始めたばかり。イスラエルが戦争を始めることは(少なくとも現段階では)阻止したい方向が強そうだ。

 まだまだイランの核開発問題の決着はわからない。外交交渉が続きそうだが、万が一の可能性を考えた取り組みは考えておかないといけない。日本はどうするのだろうか。

(終わり)

【参考資料】

・「いまこそイランを軍事攻撃するタイミングだ――封じ込めは最悪の事態を出現させる」
マシュー・クローニッグ(前米国防長官室ストラテジスト)(FOREIGN AFFAIRS REPORT 2012 NO.2)
・「外交か軍事攻撃か――空爆,外交,それともイランの核武装を放置するか」
レイ・タキー(米外交問題評議会中東担当シニア・フェロー),マシュー・クローニッグ(FOREIGN AFFAIRS REPORT 2012 NO.2)
・「新世界大戦の時代 イラン制裁の裏でオバマとモサドが画策する「戦争」という“オクトーバー・サプライズ”」
落合信彦(SAPIO 2012.2.22)
・「異論反論 中東・ホルムズ海峡が緊迫しています 日本の危機意識は危機的」
西部邁(評論家)(毎日新聞 2012年2月8日(水))
・「エネルギーを問う LNGの視覚 上 発電 ガス頼みに危うさ 在庫3週間・市場の厚み不足」
(日本経済新聞 2012年2月22日(水))
・「イランの迷走と孤立でサウジに棚ボタ」
マイケル・モラン(Newsweek 2012.2.8)
・「ゼロから読み解く イラン核開発の野望」
山田敏弘(本誌記者)(Newsweek 20122.29)
・「イラン核危機 綱渡りの舞台裏」
ダニエル・クレードマン(元米国版副編集長),イーライ・レイク(軍事問題担当),ダン・エフロン(エルサレム支局長)(Newsweek 2012.2.29)

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